容赦ない“いじめ”が可憐な少女の手を血に染めた ――『ミスミソウ』
家庭の事情で田舎の中学校に転校した野咲 祥子。そこで待っていたのはクラスメイトたちの苛烈ないじめだった。
靴を捨てられるなど序の口。針で刺される、ボウガンで狙われるなどいじめはエスカレートしていき、ついに自宅へ放火され大切な家族を失ってしまう。それでもいじめは終わらず「家族の後を追って死ね」と本気の殺意を向けられた時、祥子の“逆襲”が始まる……!
作者は『でろでろ』をはじめ明るいムードの心霊コメディ漫画家として知られる押切蓮介氏。昨年『プピポー!』がアニメ化され、この先に『ハイスコアガール』の放送も控えている売れっ子だ。そんな押切氏が本作ではギャグ・心霊要素をいっさい封印し、思春期の少年少女によるいじめを通じて“人間の心の怖さ”という新境地に挑んだ。
第1巻を丸ごといじめ描写に費やしただけあって、読者に与えるストレスとトラウマ度は相当なもの。のちに、「自分がいじめられたくないからいじめに加担する少女」「祥子に憧れるあまりいじめてしまう少女」「生徒たちに疎まれたくないからいじめを見過ごす教師」など加害者側の背景も明かされていく。
いじめを生んだ個々のキッカケはどこにでもあるものだが、積み重なっていくうちに全員を巻き込んだ“取り返しのつかない惨劇”へ繋がるストーリー構成&バイオレンス描写は圧巻。全3巻(完全版は2巻)と短めの作品だが読むうちに精神をガリガリ削られていくので、元気があり余っている時に読んでいただきたい。
【怖さ評価】5/5 ★★★★★
【備考】『ソウ』シリーズの残虐シーンに動じない記者が重度のトラウマに苛まれたレベル