「女」って、みんな強いです。陶器のような白い肌、繊細で折れそうな身体で、虫一つ殺せぬような顔をしていても、腹に秘めたパワーは、そこらの男子よりはるかに強い!

今回は、精神・肉体がタフなのはもちろん、計算高い才女や、すさまじい悪女、はたまたストーカー女まで、「怖い女」が登場する小説をタイプ別にご紹介したいと思います。

町で評判のちょっと艶っぽいイイ女:「美幸」

まずご紹介したいのは、『噂の女』(奥田英朗/新潮社)という小説です。

中古車店に毎晩クレームをつけに通う3人組、麻雀に明け暮れるサラリーマン、パチンコで時間をつぶす失業保険受給中の女―。
この物語は、とある地方都市で、そんな鬱屈した日々を送る彼らの前に、謎の女「美幸」が現れる所から始まります。

美幸は決して美人ではないのに、ぽってりした唇とナイスバディで、次々と男性の目を奪います。しかし彼女の周りでは、いつもきな臭い事件が起きていて……!?

中古車ディーラーに勤めていたときは、親会社の社長の愛人で、ついには不動産業を営む60代の社長と婚約した美幸。彼女と深い付き合いがあった男は全て、不慮の事故で次々と死に追いやられるのです。
それと同時に美幸は、ダンナの保険金を手に入れ、あっという間に高級クラブの売れっ子ママになりあがります!この小説は恐らく、実際におこった連続不審死事件をもとにしているはず。

美幸は確かに、「慈悲深い心など持たない危険な女」なのですが、意外だったのは、美幸の周りの女性たちは、彼女の成功を心の中で密かに応援していたことです。

美幸のやり方は悪いとは思いますが、不満ばかり言って何一つ変わろうとしない町の人たちを尻目に、腹の立つ男を手玉に取り、確実にステップアップしていく様子は、見ていて気持ちが良いものなのかも?こんな女、皆さんはどう思われますか?