着信40件とか普通な女:「リカ」
続いてご紹介したい小説は、第2回ホラーサスペンス大賞・大賞を受賞した『リカ』(五十嵐貴久/幻冬舎)です。
このお話は、「本間」という妻子を愛する、42歳の平凡なサラリーマンが、軽い気持ちで始めた出会い系サイトで、「リカ」と名乗る看護師の女と知り合う所から始まります。
はじめは仲良くメールや電話のやりとりをしていた二人ですが、内向的で大人しい性格だったはずのリカは、だんだんと常軌を逸した行動をし始めます。
リカは、名前はお人形のように可愛いですが、実際は、高い身長・長い髪・土色の顔、そして恐るべき体臭を持つ「化け物」です。本間がどこに行こうとも、いつだろうとも、電話をかけまくり(着信40件は普通)、本間の会社にも侵入し、勝手にパソコンの壁紙を“リカ仕様”に変えてしまったりも……。
リカに会った瞬間、速攻タクシーに乗って逃げる本間を、身長170センチの痩せたリカが車道を走り、長い髪を振り乱して追いかける様子は、まさにホラーです。
ですが筆者は、リカの全てを否定できないのが、読んでいて辛い所でした。たとえば恋愛中、メールの返事を5分待つだけでも、ものすご~く不安になってしまうことってありますよね。そして、何度もメールを送信してしまったり……。
「好きなの。だから一緒にいたいの!」その思いが大きくなりすぎて、心が不安で爆発するまでの沸点が低くなっている時は特に、気持ちのコントロールは大切だなあ……と、我が身を省みて思ってしまいました。まさに「愛と狂気は紙一重」。リカを教訓に、注意しておきたいところです。
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