描くうえで、もっとも気をつけていることとは?
「気になって友人に、“これはどうやって描いているんだ?”と質問したら、CGだと。当時、CGというとメタリックな感じがあったんですけど、えっ、こんな表現もできるんだ!……と驚きまして」
ここからコンピュータで絵を描くことに、どっぷりと浸かっていったという。
元々、漫画家になりたいという希望があり、カラー原稿よりも漫画のモノクロで描かれた絵(というか漫画はイラストの連続で何かを表現するもの)を得意としていたという左先生だが、着色をした美麗(びれい)なイラストを描く作家に変貌をしていったのだ。
「それまではカラーに、さほど興味が無かったんですよ」
それがたった数年でトップにまで登るとは……。
それでは、描く上で最も気をつけていることって何でしょう?
「艶、ですね。艶っぽさ。肌の質感が出るように気をつけています」
イラストは肌の部分に、ただ「肌色」を乗せれば終わり……にはならない。物とは違う「肌」というものを描くことは最も難しい作業の一つだ。イラストのなかで「生きてる」ものの肌を、私たちの持つ・知る肌を連想させて納得するものを描くのだ。
仕事場にお邪魔して目の前で、スクリーンのなかで、どんどん温もりのあるような人物ができてゆく光景が、すごく不思議に見える……。
横浜について。心が躍る場所に身を置きたい
横浜に、並々ならぬ想いがあるという左先生。ずばり、横浜で一番好きな場所を聞いてみると……。
「JRの横浜駅舎と五番街、その周辺です」
どんな思い入れがあるんでしょう?
「学校終わりとか休日に、電車に乗って横浜(駅)に行ってたんです。いろいろなものがあったんです。ゲームセンターや絵に使う画材を買いに訪れていました。好きなものが、たくさんあって、わくわくする場所なんで思い出深いんです」
確かに横浜駅界わいには何でもある。モノも人も、楽しいことだったり興味を惹かれて心躍る出来事だってそうだ。別に多摩川を越えなくても、勝手知ったる地元で好奇心を腹一杯に詰め込んで、知識の水を飲んだものだ(そんな方、多いんじゃないですか?)。
若いころ街が、自分の「血肉」になった。……何だか、学生時代を思い出す。
「実家を出て横浜駅のそばにアトリエを構えたのも、そんな思い出があるからなんです」
わくわくする場所に、身を置きたかったと。
「はい!」
自分の仕事が大好きで、それを懸命に取り組んでいる人。言葉にするのは簡単だけど、出会ってみると何だかこちらまで嬉しくなってくる。
(あぁ、そろそろインタビューが終わってしまう……)
一番最近のお仕事は何でしょう?
「横浜にあるゲーム会社、コーエーテクモさんのゲーム『討鬼伝 極(とうきでん きわみ)』に登場するキャラクターのデザインをしましたので是非、チェックしてください!」
おぉ、コーエーテクモさん! はまれぽでも紹介しました! 北米やアジアマーケットでも好調なセールスを誇るゲームメーカーですよね。
左先生のイラストがまた世界に発信されるんですね~。
【取材を終えて】
絵には実体がない。そして人の身体には“線”も無ければ“面”もない。そんな人物を、線と面で描き切ってしまう。また絵のなかで空間や光や風を、匂いや漂う空気感まで感じさせて、見たことのないものを見て誰かにまたそれを見せてくれる。そんな彼ら、モノづくりを画家とか絵師とか、イラストレーターやクリエイターと呼ぶ。
世界中が注目する、横浜から現れた才能は最も勢いのあるイラストレーターで、これからもっと、必ず大きくなる方だと実感する。
ぜひ「イラストレーター・左先生」を覚えておいて損はないですよ。
こんな方が横浜出身で、少し鼻が高いや……なインタビューでした!
―おわり―
※本記事は2014年7月の「はまれぽ」記事を再掲載したものです。