武田梨奈(C)エンタメOVO

 「酒呑みの舌」を持って生まれたOLの村崎ワカコがさまざまな酒場をさすらい、女ひとり酒を堪能する人気ドラマシリーズ「ワカコ酒」。そのSeason8が、1月8日(水)からBSテレ東で放送開始となる。2015年のSeason1から10年にわたって主人公のワカコを演じてきた武田梨奈が、代表作となった本作に懸ける思いや「自分の意識が大きく変わった」という海外語学留学の体験について語ってくれた。


-「ワカコ酒」の放送開始からついに10年が経ちました。お気持ちはいかがですか。


 本当にありがたいです。正直、こんなに長く続くとは想像もしていなかったので、うれしい気持ちでいっぱいです。おかげで、Seasonを重ねるごとに、少しずつ認知度が上がってきたと感じることも多くて。ロケをしていると、通りかかった方が「ワカコ、次やるんだね」とか「ワカちゃん!」と、まるで知り合いに会ったように親しく話しかけてくださるんです。Season1、2の頃には考えられませんでした。


-10年続く中で、「ワカコ酒」という番組に向き合う気持ちに変化はありましたか。


 私自身は、23歳のとき、最初にワカコを演じた新鮮な気持ちと緊張感を忘れずにいたいと思っています。ただその分、毎Season、クランクインの前日は「ワカコに戻れるかな?」と、眠れないくらい緊張してしまって。だから、事前に「どんな感じだったかな?」と、昔の映像を見直したりしています。それは、10年経った今も変わりません。


-それが、いつまでも変わらないワカコの魅力の秘訣(ひけつ)なんですね。


 その一方で、私自身の責任感はどんどん増していっています。お酒を提供してくださる企業や場所を貸してくださるお店など、多くの方の協力がなければこの作品はできません。それを10年続けるのがどれほど大変か、これまで見てきたので。おかげで現場でも、始まった頃は最年少で皆さんに支えられっぱなしでしたが、今では「自分が引っ張っていかなければ」という自覚も芽生えてきました。


-なるほど。


 監督やスタッフの皆さん、他のキャストの方々など、10年一緒にやってきた方がたくさんいる一方で、今Seasonから門間航(山本樹役)さんが参加してくださったように、新しいメンバーも少しずつ増えてきましたし。そういった意味でも、ゲストの方やエキストラの方々を含め、皆さんに「『ワカコ酒』の現場は楽しかった。また参加したい」と思ってもらえるようにしたいと常に考えています。

-そういういい現場にするために、座長として取り組んでいることはありますか。


 出演してくださるお店の方やエキストラの方々を含め、待ち時間に皆さんとお話しをして、いい雰囲気を作ることを心がけています。お店の方はカメラに不慣れで緊張していらっしゃいますし、エキストラの皆さんなしでは作品が成立しません。むしろ、エキストラの皆さんの方が、私より大変だったりするんです。映るかどうかもわからないのに、何度も同じものを食べ、口パクでお芝居しなければいけないわけですから。にもかかわらず、いつも笑顔でいてくださる皆さんに、私が助けられている部分もあって。そんなふうに、みんなで作っている作品なので、できるだけコミュニケーションをとり、楽しい現場にしたいと思っています。


-その積み重ねで「ワカコ酒」はこれまで続いてきたわけですね。ところで、今回はSeason7から1年4カ月ぶりの「ワカコ酒」となりますが、武田さんにとってこの期間はどんな時間でしたか。


 実は最近、大きな作品が終わるたびにお休みをいただき、2~3週間の短期で海外に語学留学しているんです。Season7から8の間にも色々な国に行きましたが、最近はフィリピンの映画に参加していたこともあり、フィリピンへの留学を繰り返していました。


-アクションが得意な武田さんらしい行動力です!


 「留学」といっても、私が参加するのは1日12時間くらい集中的に勉強するコース。当然、コミュニケーションはすべて英語。多国籍で幅広い年齢層に、さまざまな職業の方が受けます。そういう環境で生活し、今まで知らなかった世界に触れたことで、自分の意識が大きく変わりました。おかげで、単なる「語学の勉強」以上の経験ができ、人生を見つめ直す時間にもなり、すごく刺激的でした。


-それはなにかきっかけがあったのでしょうか。


 10代からこのお仕事をしてきましたが、30代手前で自分の中で足りないものが明確に見えたんです。でも、その時はちょうどコロナ禍だったので、落ち着いたらやりたいことを全部やろうと思って。それを今、実行している最中で、その一つが語学留学なんです。


-その成果が俳優業でも発揮されていると?


 最近は香港やフィリピンの映画に出演させていただくなど、今後の予定も含め、少しずつ国際的な作品に携わる機会が増えています。語学を学んだおかげで、今ではプロデューサーやスタッフの皆さんと通訳抜きでコミュニケーションをとれるようになりました。

-語学留学を経験し、「ワカコ酒」に臨むお気持ちに変化はありましたか。


 “美味しい”を共有する時間の尊さをより感じながら撮影に臨めるようになりました。留学中、平日は朝から晩までみっちり勉強なんですけど、土日にはレストランに行って乾杯すると、それだけで「人ってこんなに距離が近くなれるんだ」と思う瞬間がたくさんあるんです。みんなで食やお酒を共有する時間の素晴らしさは、世界共通なんだなと思って。


-今後さらに「ワカコ酒」の魅力が高まりそうですね。留学の成果を生かして、ぜひ海外ロケをお願いします!


 私もずっと「海外ロケをやりたい!」と言っているんです(笑)。実は、今回のSeason8から「孤独のグルメ」を担当されていたプロデューサーが参加してくださっています。「孤独のグルメ」は、私もリスペクトするグルメドラマの元祖なので、いろんなお話を伺って、今後の参考にしたいと思っています。


-「孤独のグルメ」とのコラボも期待しています!


 先日、原作漫画のコラボが実現し、新久(千映/『ワカコ酒』原作者)先生が「夢のコラボが実現しました!」と言っていました。ドラマでの方も、いつかコラボできたらうれしいです。


-それでは年初ということで、武田さんの2025年の抱負を教えてください。


 今年は、私にとってすごく楽しみな1年です。毎年、1年の抱負を聞かれると、期待と不安が半々なんですけど、今年は不安がまったくなくて。語学留学も含め、それくらいいろんなインプットができたので、2025年はたくさんアウトプットしていきたいと思っています。1月17日には映画『室町無頼』の公開も控えていますし、念願だった海外作品やアクション作品への出演に関して、今年は皆さんにいいお知らせができそうです。そういう1年のスタートを「ワカコ酒」で切れることに、すごくワクワクしています。


-最後に、「ワカコ酒 Season8」への意気込みをお聞かせください。


 これまで10年、いろいろなお店に伺い、数えきれないくらいのお酒やお料理をいただきましたが、毎回初めて感じることがたくさんあるんです。今回もワカコが「こんな飲み物、初めて!」と言っていますが、同じビールでも、誰と飲むか、何と一緒に飲むかによって、味が変わるんですよね。それがすごく面白いなと。これからもさまざまな発見があると思うので、色々な“美味しい”を、Season8でも皆さんにお伝えしていきたいです。


(取材・文・写真/井上健一)