
25周年を迎えたBunkamuraオーチャードホールと国際的に活躍する指揮者の西本智実が、今秋より新たなコンサート・シリーズをスタートさせる。
「西本智実 イルミナートフィル オーチャードホール定期演奏会」の公演情報
記念すべき第1回目のコンサート・プログラムは、カール・オルフ作曲『カルミナ・ブラーナ』。ソプラノ、テノール、バリトン、混声合唱、少年合唱、大編成オーケストラを要する大規模カンタータだが、本公演では、音楽だけでなく、映像と字幕も駆使した“新総合芸術”として上演する。映像台本は西本智実、ヴィジュアル化は映像デザイナーの大野一興が手がける。
プログラムの選曲について、西本智実は「いまの時代に即したもの。作品を通じて今伝えたいこと」を特に重視したという。
「『カルミナ・ブラーナ』が作曲された当時(19世紀前半)と似た空気が、現代にもあると思います。歌詞の内容は、まるで教会の落書き帳のような感じ。古いイタリア語やドイツ語が用いられ、世俗的なものから、運命や宿命を感じるものまで、バラエティ豊かに描かれています。初めて聴かれる人だと、字幕だけで歌詞を全て理解するのは難しいかもしれませんが、そういう部分については、映像を用いて表現することにしました。出来れば、西洋の音楽ということを超えた、いまの時代にも即した普遍的な何かを感じてもらえればと思っています」
映像を手がけるデザイナーの大野一興は「西本さんは、異なる時代、文化に点在する色々なものに、鋭い感覚でアプローチできる方。彼女が書いた映像台本をそのままトレースするのではなく、どうすれば思い描く祝祭的な舞台を表現できるかが大事だと思っています」と意気込みを述べた。
コンサートの前半には、西本智実自らが作曲する新曲「天の岩戸伝説<ヘブライからの風>」が初披露される。
「カルミナ・ブラーナの前に、短い序曲を入れたいという要望があったのですが、なかなか合う作品が見当たらない。そうした時、カルミナの冒頭の歌詞「おお運命の女神よ」から、ふと『天の岩戸』を連想したのがきっかけになりました。私は以前よりヘブライ研究をしていたこともあり、どんどんイメージが膨らんで、最終的には自分で作ることになりました」
現在作曲中の新曲は10分程度になる予定。最後の音は『カルミナ・ブラーナ』の最初の音と同音にすることで、プログラムに一体感をもたせたいという。
西本智実 イルミナートフィル オーチャードホール定期演奏会は、11月14日(金)にBunkamuraオーチャードホールで開催される。チケットは発売中。