聞く人は最初に話されたことしか覚えていない

どんなに理解力が高い人でも、興味があることしか耳に入りません。また、長い説明になるほど、最初に話されたことしか記憶に残りにくいです。残念ですが、人前で話をすることに慣れて入る人ほど、このことに気づきにくくなります。

学生時代を思い出してみてください。退屈でたまらなかった校長先生や教授の話し方は下手だったでしょうか。少なくとも、学生だったあなたよりは、人前で話をするのに慣れていたはずです。それなのに、まったくつまらない話に聞こえてしまったのは、もともとあなたにとって興味がない話なのに、あなたにどんなメリットがあるか提示されずに、えんえんと長い話をされたからだと思います。

学生時代のあなたが、数学や哲学にまったく興味がなかったとします。もし、講義の最初に、「これから説明する数式を応用すれば、毎月の携帯料金を安くできる」、「ギリシャの哲学者の考え方を応用することで、就職活動の時に会社を選びやすくなる」といったことを話してもらったとしたらどうでしょうか。難解な内容であっても、もう少し講義を熱心に聞いてみたくなった可能性は高いですよね。

社会に出て、今の仕事に携わっているあなたは、自分の仕事の専門知識と経験が増えています。ついつい、知識や経験が豊富なことをプレゼンテーションの場で語りやすくなっているともいえます。学生時代の先生と、同じミスをしがちになっているわけです。
 

相手にとってメリットがあることを1分で最初に話す

逆にいえば、いくら複雑なプレゼンテーションであっても、相手にとってメリットがあることを最初に話して、その理由を説明するようにすれば作業がとても楽になるということです。目安として、最初の1分間で相手にとってメリットがあることを話し、残りの時間で、その理由について説明していくことを考えるとよいでしょう。

プレゼンテーションで話し始めた瞬間は、集中力も持続しています。開始後1分だけを乗り切れば、あとは極端な話、手元の資料を見て相手が判断してくれます。そう思うと、あなたが口べたであっても、多忙な毎日を送っていても、プレゼンテーションが苦痛に感じにくくなるのではないでしょうか。

福岡県北九州市生まれ 93年から週刊誌・書籍のライターとして活動。救急医療の現場取材・社会保障問題といった社会派な記事から料理、食べ歩き、映画論評まで執筆ジャンルは様々。児童文学作品を上梓する傍ら、フードコーディネーターとしてメニュー開発なども行う。近著に「さぼちゃんのおぼうし」「うちの職場は隠れブラックかも」。ブログ