ネコがバス? バスがネコ? 『となりのトトロ』の衝撃
この時に日本のアニメーション、中でも『ルパン三世 カリオストロの城』が好きなことがきっかけでスタジオジブリに招待され、宮崎駿監督と出会いました。
それは1987年11月11日のこと。この日付入りのサインを自慢げに見せていました。
『となりのトトロ』を制作していた宮崎駿監督が見せてくれたのは、ネコバスのスケッチ。
ネコがバスということに仰天したラセター。
ネコバスの表情は宮崎駿の笑みそっくりだそうです。
ピクサーではストーリーに行き詰まると宮崎駿作品にヒントを得る
『トイ・ストーリー』で2度目の来日を果たしたラセターは、『もののけ姫』を制作中の宮崎駿監督と会います。
CGアニメーションを嫌っている宮崎駿監督ですが、『トイ・ストーリー』をCGではなく作品のハートやストーリーを見て愛してくれたそうです。
そこでラセターが驚いたのは、宮崎駿監督がすべて1人でストーリーを書いているということ。
ピクサーではストーリーに行き詰まると宮崎駿作品を観て、発想を得るそうです。
その後も来日するたびに必ずスタジオ・ジブリに1日は使うというラセター、宮崎駿作品を世界中に観てもらいたいと考え、『千と千尋の神隠し』以降は英語版の制作に携わるようになります。
スタジオ・ジブリ作品の配給・プロモーションも担当し、ピクサー・スタジオで宮崎駿監督の公演や『もののけ姫』のチャリティ試写会やなど、ジブリとピクサーの交流が始まりました。
そこで見せてくれたのはピクサーでのラセターのオフィス。三鷹の森ジブリ美術館で使い終わったネコバスを大切に飾っています。
そんな『となりのトトロ』を何よりも愛するラセターが映画史上最も見事だというシークエンス、サツキとメイがバス停で待つ中トトロが登場しネコバスに乗っていくシーンを上映しました。
ハリウッド式にはない「静かな瞬間を愛でる」宮崎駿作品の美しさ
宮崎駿監督が多くのクリエイターに影響を与える理由が「静かな瞬間を愛でる」こと。
何も起こらないが美しい「瞬間」を大切に扱うことで、次の出来事を輝かせます。これは常に何かを起こし続けるハリウッドではできない手法。
また、キャラクターの個性を動きの細部でリアルに説明していく掘り下げ方や語り方、さらに水の扱い方など、「静かな瞬間を愛でる」ことで表現していく手法を語りました。
そして彼の独創的な発想。ネコがバスという発想、ネコバスのドア、ライトとなるネズミなど興奮するようなポイントを列挙していました。