子育ての苦悩は乗り越えられない、でも…

ここまで行動力のある宮城さんでも、もちろん子育てで気分が落ちることや辛いこともあったそうです。
「負のスパイラルをすごく感じている時があって。子供を産むと見えない鎖でつながれているような疎外感を覚えることもあり、また孤独感もありました。」
若くして第一子を出産した宮城さん。子育て情報誌もほとんどなく、インターネットも普及していない中での子育ては、情報が溢れている現在育児中の私たちには想像できない世界です。どのように乗り越えたのでしょうか。

「乗り越えたとは思っていないですね。最初の出産が若かったこともあり、子育てと仕事と生活とが同時にスタートして、悩みはずっとありました。ただ、発想の転換で前向きになれることもある、ということも分かったんです。」

“ママががんばらなくていい場所”を目指して設立したという「自由が丘ママの会」。実際、筆者も児童館や公園で、すでに出来上がっているママグループに溶け込もうと気を張って疲れることがあり、息抜きのための場所がその機能を果たしていないと嘆くこともあります(宮城さん曰く、こういうママは結構多いらしいです)。
 

今の状態でできることを考えて

ママの会を立ち上げて1年、設立時の願いは“ママの雇用の多様化”だったと語る宮城さん。
“今ある自分を大事にしてほしい”というメッセージのとおり、会員の方にも自分が持っている技術や情報で働くことを勧めているそうです。

教室の告知ポスターなども会員のママがデザインを行っている

「講師がやりたい人は、資格を取得しなくてもそのままの技術を必要としている人達とマッチングさせればいいと思うし、持っている情報をお仕事にすればいい、というのは教室の生徒さんにもよく言っています。しかし、やはり最初はみんな『できない』となるので、まずはベースを作ろうと思ったのも設立のひとつのきっかけでもあります。」

仕事を始めたいけど子供を預ける場所がないという声も多く、保育事業なども勉強したそうですが、スペースの確保や事業主としての投資などリスクも高く、痛感したのは「キリがない」ということ。
宮城さん自身、子供を自宅で育てながら働けていたということもあったので、保育事業を進めるよりも個人と企業のマッチングを手伝う役目を担いたいと思い、それを社会にアピールしていきたいと語ります。
キャリア支援プロジェクトも立ち上げ、個々に合った内容で講師を目指すママたちのために、カウンセリングやコンサルティング、勉強会を行っているそうです。

また、名前、年齢、電話番号、住所、子供の性別、子供の人数、子供の誕生日まで必須登録となっている「自由が丘ママの会」の会員は1000名以上。さらに7割は世田谷・目黒の在住だそう。
ママの会では、その特徴を生かしてマーケティングやプロモーションを“仕事”として請けているほか、教室に呼んだ講師はもちろん、イベント時に手伝う会員のスタッフにも謝礼を支払っている。
そこにも“動いた人には動いた分だけの対価を”という宮城さんの思いが込められています。
 

「働く」=「保育園」ではない!

様々な取り組みや今後の展望などをお話ししてくださいました

「保育園に行かなくても働けるという意識改革がしたい」という宮城さんのお話しを伺って、子供がいるから働けないと思っているママにも、宮城さんの活動や思いを知ることで意識を変えてもらえる機会が増えればいいな、と思いました。

「似たような団体が増えればいい」と語る宮城さん。キャリア志向のワーキングマザーを応援する団体などはほかにもありますが、あちこちでこういった“ママのままで”働けたり息抜きしたりできる環境が増えて、それが大きな流れとなって企業や行政もビジネスモデルとして取り入れていけるような、そんな社会になってほしいと切に願います。

 

・宮城明子さんプロフィール
NPO法人 自由が丘ママの会代表理事。高校生、小学生の男の子、幼稚園の女の子3人の子供を育てながら、自由が丘ママの会の運営やコンサルティング、企業プロデュースなどの仕事を個人で請けている。ママの会では、自分らしさを大切にするママのためのキャリア支援も行っています。

自由が丘ママの会
1000名以上の会員データを活用したママ・マーケティングやプロモーション、商品企画・開発、企業や行政とのタイアップイベント企画・運営などを行うほか、ママが無理せず楽しめるコミュニティの場を提供している。キャリア支援プロジェクトも開講しているので、詳細はHPを

編集プロダクション株式会社イメージング・ワークス勤務。首都圏のおでかけ情報誌を中心に、雑誌の編集・ライティングを行う。2012年末に娘を出産し、人生観が約90度変わる。ライフワークバランスについてゆるりと考えつつ、子連れで行けるイベントや遊びスポットを日々模索中。