そんな北京料理の老舗が提供するカレーがこちらの2品。創業時から続く定番メニュー「牛ヒレ肉の中華カレーライス」と「鶏肉の中華カレーライス」だ。
ところで、なぜ北京飯店では50年以上前の創業時からカレーを提供していたのだろうか?
同店3代目常務の奥様として店を切り盛りする王子惠真(おうじ・えま)さんによると、「先々代の創業者・王子烈(れつ)が外交官をしていたため、外国人のお客様も多くいらっしゃることから、海外の方にも親しみのあるカレーをメニューに加えたのだと思います。
また、カレー粉自体も排骨などの味付けに使われる中華料理の身近な調味料でした。そこから当店の『牛ヒレ肉のカレー炒め』という一品料理が生まれ、その味をお一人様でも気軽に楽しんでいただけるよう、ご飯を添えたのが始まりと聞いています」とのこと。
また、中華街でカレーを提供している“意外性”いう点でメディアにも注目されやすく、特にここ1~2年はテレビや新聞などの取材が一気に増えたそうだ。
そうした各メディアからの発信が、最近のカレーブームのきっかけになったのでは……と王子さんは話す。
あっという間に2品のカレーが完成
そして、こちらでもカレーの試食を前に、作っている様子を見せていただきたいと王子さんに願いしたところ、「ぜひどうぞ」と快くOKしてくださった。やはり中華街のお店の厨房にお邪魔できるのは貴重な体験だ。中華街マニアの筆者としても、ますますテンションが上がる。
カレーを作ってくださるのはコックの温さん。
牛ヒレ肉の中華カレーライス・鶏肉の中華カレーライスともに、基本的な作り方は同じ。油通しした肉とタマネギを炒め、独自にブレンドしたオリジナルのカレー粉・鶏ガラスープ・調味料・水溶き片栗粉を加え、サッと炒め合わせて完成。
味の決め手は、半日かけてじっくりダシをとった同店自慢の鶏ガラスープ。上質な肉の旨みと食感を生かすために、具材を煮込まず短時間で手早く仕上げ、牛ヒレ肉のカレーは醤油、鶏肉のカレーは塩で味を調えているそうだ。
「じゃあ、さっそく作るよ。あっという間にできちゃうから、見逃さないでね!」と温さん。「え~、そんなに早いの??」と身構えつつ、ちょっとワクワク&ドキドキ。
まず、油通しした肉とタマネギをササッと炒め、カレー粉・調味料・鶏ガラスープを加えて炒め合わせ、水溶き片栗粉を加えて手早く火を通し、ご飯の上に盛り付けて完成!
温さんの言葉通り、完成までの調理時間は何と2分弱! まさに、あっという間のスピード技である。先にご紹介した同發本館のカレーもそうだったが、中華スタイルのカレーは作り置きせず、煮込まないのがポイントのようだ。
中華料理の炒め物は強火でサッと炒め合わせたものが多いが、カレーも中華では炒め物のひとつなんだと妙に感心してしまった。