三世代に受け継がれる服
客層は幅広く、3世代で通う人も多い。「フクゾー」では服の修理も行ってくれる。そのため「一つのものを長く愛用してくださる方が多いんです」と鈴木さん。中には赤いトレーナーを「40年間ピンクになるまで着続けて修理に来る人」や「おじいちゃんのコートを直してほしい」という人も。
修理には時間と手間がかかる。たとえば「コートの袖を修理する」という場合。修理する箇所だけを直すとそこが不自然になってしまう。そのため、全体をチェックして修理する。「修理ができる」というのは「商品を熟知し、高い技術を持つ職人がいるからこそ」だろう。
「30年ほど前は中華街に住む、日本人の刺繍職人さんがいた」と珠水さん。商品を大量に袋に入れ「当番制で、中華街へ持って行っていた」らしい。その中華街にいた方(以下、おばちゃん)が縫う「タツノオトシゴ」は「ふっくら太め」。なので、お客さんが当時の商品を修理に持ってくると「ああ、おばちゃんが縫ったんだな」と分かるそうだ。
ちなみに「職人さんによって縫うタツノオトシゴが違う」とのこと。常連さんは自分好みの形のロゴを見て買っていくんだとか。おもしろい!
「お客様の用途に合った服を対面式でご提供するのがフクゾーのモットー」と珠水さん。「子どもの受験があるので面接にはどの服がいいか」など、お客さんのニーズに合った“接客のプロ”がいるのも頼もしい。また、トータルコーディネートが楽しめるというのも「生地から手掛ける」という「フクゾー」ならではだ。
創業以来約70年。「フクゾー」では一貫して品質にこだわり、服を作り続けている。逆に「変わったこと」はあるのか? 以前は「グレーやブラウンなどの色の商品はなかった」。だが、お客さんのニーズに合わせ、ここ15年ほど前からグレーやブラウン茶の商品を置くようになったそうだ。