先行きの見えない不景気の真っ只中、景気のいい話が飛び込んできました。ご存知、レンジャーズ入りしたダルビッシュ有の話です。ポスティング史上最高額となる約5170万ドルに6年総額6000万ドル。1ドル=76円として、日本ハムは39億2920万円を手にし、ダルビッシュは45億6000万円を勝ち取ったことになる。「夢のある話しだなぁ~」なんて、思っていたら、24日にはタイガースとフィルダーが10年2億1400万ドル(162億6400万円)で契約なんて、ニュースが駆け巡った。A・ロドリゲス内野手(ヤンキース)の10年2億7500万ドル、A・プホルス内野手(エンゼルス)の10年2億5400万ドルに次ぐ歴代3位の大型契約は、MLBのスケールの大きさがビンビン伝わってくる。


 (MLB.jp ダルビッシュ会見 その1)
  (MLB.jp ダルビッシュ会見 その2)

  
  ただ、MLBは出す時は出すが、渋るところは渋る。ブルワーズが青木宣親と結んだ契約は2年225万ドル(1億7100万円)。ヤクルト時代から4分の1以下となる数字を受け入れたことになる。マリナーズは岩隈久志と年俸150万ドル(1億1400万円)でサインした。昨オフ、岩隈はポスティングでアスレチックスと4年1525万ドルの提示を受けたが、結局、楽天残留の道を選んだ。’11年の成績は防御率2.42ながら6勝7敗、右肩痛で戦線離脱した点もマイナスとなり、年額231万ドルダウンする評価額となった。

  
  一方、昨季13勝16敗・防御率3.07の黒田博樹はヤンキース入りし高評価をゲットした。年俸は1000万ドル(約7億6000万円)で出来高払いは投球回数で決まる。160イニングから10イニングごとに20万ドル(約1520万円)が支払われ、200イニングで総額100万ドル(約7600万円)となる。ちなみに黒田は昨季202回投げている。メジャー4年間の信用がダルビッシュ以上の評価を得たことになる。

  
  日本に目を移すと、日本人最高年俸は岩瀬仁紀(中日)の4億5000万円、2位に小笠原道大(巨人)4億3000万円、3位の4億円に城島健司(阪神)、藤川球児(阪神)、阿部慎之助(巨人)が並ぶ。


撮影:本美恵浩

  
  成績がよければ、給料が上がるのは日本球界も同じだ。最多勝をはじめ、最優秀防御率、沢村賞などを獲得した田中将大(楽天)は、6年目で1億2000万円アップの3億2000万円の契約を勝ち取った。セ・リーグMVPの浅尾拓也(中日)はほぼ倍増の2億6000万円、2億5000万円のパ・リーグ本塁打王・中村剛也(西武)、2億4000万円のセ・リーグ最多勝・吉見一起(中日)は100%増で契約を更改した。


撮影:本美恵浩


撮影:本美恵浩



  もちろん、成績が落ちれば下がる。今オフは大物たちの年俸減額制限25%を超える例が、かつてないほど多かった。金本知憲(阪神)は37%減の3億5000万円→2億2000万円、高橋由伸(巨人)は51%減の3億5000万円→1億7000万円、三浦大輔(DeNA)は半減の3億円→1億5000万円である。楽天から中日に移った山﨑武司は現役を続けるために、2億5000万円→3000万円の88%減という条件を飲んだ。


  巨人の山口鉄也、越智大祐、東野峻を見ると、いつどのように活躍するかで年俸が変わってくるのがわかる。実働5年28歳の山口は、4年連続60試合登板をクリアし、年俸は1億2000万円。’08年から2年連続60試合登板し、’10年は59試合、’11年は42試合に投げた実働4年28歳の越智は7500万円、’08年に中継ぎを中心に28試合に登板し、ここ3年間は先発として29勝27敗の実働4年25歳の東野は6500万円となっている。’08年新人王・坂本勇人は実働4年で1億1000万円、’10年新人王にして昨季の首位打者・長野久義は実働2年で9500万円である。

 
  昨年のオフに9年で95勝42敗を積み上げた杉内俊哉が3億5000万円、8年で91勝56敗の和田毅が3億3000万円となり、さらにインセンティブ重視、契約交渉の席での発言などが物議を醸したが、いついかに好成績を収めるかによって格差が広がったり、縮まったりするものである。

 
‘10年のサラリーマンの平均年収は412万円、男性サラリーマンは507万円と言われる中、野球界には夢がある。明日にはプロ野球のキャンプインが始まる。3月にはMLB公式戦も東京ドームにやって来る。とにかく、来るべき開幕へ向けて、しっかりした準備をしてほしい。選手たちが見せる一流の技を見るために、我々はせっせとお小遣いを溜めるのだから。チケット代、ビール代、試合後の居酒屋代を入れたら、1万円は飛んでしまうけど、球場で一喜一憂するのはヤメられませんから!
 

あおやま・おりま 1994年の中部支局入りから、ぴあひと筋の編集人生。その大半はスポーツを担当する。元旦のサッカー天皇杯決勝から大晦日の格闘技まで、「365日いつ何時いかなる現場へも行く」が信条だったが、ここ最近は「現場はぼちぼち」。趣味は読書とスーパー銭湯通いと深酒。映画のマイベストはスカーフェイス、小説のマイベストはプリズンホテルと嗜好はかなり偏っている。