Q4 どうしたら酒場で韓国の人とふれ合えますか?

日本人に限らず、外国人は韓国人の興味の対象です。

テーブルとテーブルの近いこぢんまりとした店や、肩と肩がふれるような屋台のカウンターでは、酔いも手伝って声をかけてくる韓国人も少なくありません。そのときの言葉は韓国語だったり、ブロークンの英語だったり、日本語だったりします。

しかし、もっと積極的に交流の機会を作りたいなら、自分からアクションしてみることが大事です。

隣席の人と目が合ったら、まずは「アニョハセヨ(こんにちは)」とあいさつしてみましょう。

そのあとは、隣席のつまみを見て、「マシッケンネヨ~(美味しそうですね~)」と言えば、おすそわけにあずかれるかもしれません。

そして、自分の酒が来たら、「コンベ ハプシダ(乾杯しましょう)」と隣席の人にグラスを近づければ、相手も「コンベ!」と言いながらグラスをぶつけてくれるでしょう。

筆者の日本の友人知人には、酒場での日韓交流を楽しみにしている人が多いので、そのきっかけづくりにちょっとしたプレゼントを用意している人もいます。

ある人は100円ショップでまとめ買いした日本的な割りばし(チョッカラッ)を、ある人は100円程度のノド飴(モッケンディ)を、そして、またある人は質のよいポケットティッシュをカバンに忍ばせています。

プレゼントの効果というわけではありませんが、計算して帰ろうとしたら、すでに隣席の客が支払ってくれていたなんてことも珍しくありません。

筆者は日本からの旅行者や韓国駐在者を対象とした「ソウル酒場ツアー」を主宰しています。3時間半ほどの飲み歩きなのですが、参加者が地元の人たちと交流できるようなきっかけづくりに努めています。

「ソウル酒場ツアー」の問い合わせは、Xまたは、InstagramDMで。

Q5 韓国の人とふれ合えるチャンスの多い店を教えてくだい。

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屋台(ポジャンマチャ)は席と席が近いので、声をかけやすく、また、かけられやすいことは確かです。

しかし、最近のソウルでは他人に干渉しまいとするスマートな若者も増えているので、気をつかって話しかけてこなかったりします。

その意味ではソウルより第二の都市釜山のほうが人なつっこいでしょう。国際港としての歴史があったり、朝鮮戦争のときに全国からの避難民を受け入れた歴史があったりするので、釜山人は外部の人に対してフランクだといわれているのです。

ソウルでも釜山でも、人なつっこいのは若者ではなく中高年のおじさんたち。中高年が集まり、しかも席と席が近い飲食店として挙げられるのは、シュポと呼ばれる業態です。

シュポとは、スーパー(マーケット)の韓国的発音。つまり、個人経営の小さな食料雑貨店のことです。

日本に酒屋の店先で飲むスタイル(角打ち)があるように、韓国ではシュポで気軽に飲むことができます。市場の近くや零細工場の密集地に多く、日本の旅行者の行動範囲だと乙支路4街(ウルチロサーガ)や鐘路3街(チョンノサムガ)辺りに点在しています。

周辺の工場や商店で働いているおじさんたちが、茶菓子を買ったり、コーヒーを飲みに来たりする場所ですが、常連客は仕事終わりにシュポに寄って、お酒を買って飲んだりします。

そうすると、シュポの主人は常連のために座って飲める席を用意したり、簡単なつまみを作って出したりするようになります。酒場としてのシュポはそれが常態化した例です。

ふつうの飲食店より酒が1,0002,000ウォンは安いのも魅力です。日本の角打ち同様、ポテトチップなどの袋菓子や缶詰をつまみに飲むこともできます。

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客層は5060代の常連が中心。彼らはそもそもシュポのようなところに日本の旅行者が来るとは思っていないので、珍しさも手伝って、積極的にかまってくれます。

シュポの主人はたいてい中高年女性。日本語で言う女将です。その人柄や料理の腕前で常連客の母親のようなアイドルのような存在です。彼女に愛想よくすれば、隣席の客と交流するチャンスも増えるでしょう。

鄭銀淑:ソウル在住の紀行作家&取材コーディネーター。味と情が両立している食堂や酒場を求め、韓国全土を歩いている。日本からの旅行者の飲み歩きに同行する「ソウル大衆酒場めぐり」を主宰。著書に『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』『釜山の人情食堂』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』など。株式会社キーワード所属。