藤井は、

1人目の野原をセカンドゴロ
2人目の角を三振
3人目の又野を三振
4人目の深江をセカンドゴロ

と、打者4人を完璧に打ち取ります。

この藤井秀悟の投球はうまいこと言い表せませんが、とにかく本当にすごかったです。

おそらく2014年の12球団合同トライアウトは藤井秀悟回として後々まで語り継がれると思います。

 

 

とくに3人目の打者・又野との対戦でのファールで粘られたからのチェンジアップで奪った三振はこれまでの野球人生の集大成といった感じで、

4人目の打者を打ち取ってマウンドからの降りる際の観客席からの拍手喝采と、帽子を取ってそれに答える藤井の姿は本当に映画のワンシーンのようでした。

普通に感動して泣いてしまいました。

 

ただ、いくら投球成績が完璧だったとはいえ、おそらくプロの球団から声がかかることはないだろうなということを、この時、球場にいたほとんどの人がわかっていたと思います。

なぜならストレートの球速が130km前半しか出ていなかったからです。正直、素人目に見てもこの球では厳しいだろうなということがわかりました。

だからこそ、最後の最後に本当の真剣勝負で、己の魂のみで抑えるような投球をした藤井秀悟の姿に心動かされたんだと思います。

これを球場で見れただけでも本当に来た甲斐がありました。

 

 

出待ち

そんなわけで10人の投手によるシート打撃が終わり、トライアウトはわずか1時間半ほどで終了してしまいました。

が、ここからまた球場に来ていた観客たちの動きが活発になります。ほとんどの観客が何とかして選手と接触しようと出待ちをはじめました。

というわけで、自分も周りに乗じて出待ちをしてみることにしました。

 

 

出待ちをしている人のほとんどがこの駐車場の出口のところに陣取っていました。

この道を車が通るたびに出待ちをしている全員で車の中を覗き込んでお目当ての選手が乗っていないか確認していきます。

車の中に乗っている人たちはどういう気持ちなんでしょうか?

 

 

1時間以上待っても選手はまったく通りません。

出待ち客たちの上空をカラスが旋回し始めました。

「あの選手はリンカーンを売って普通車に買い替えたらしい」など、出待ちしているファンの間で選手が乗っている車の情報がやり取りされる中、まったく関係ない車が目の前をどんどん通過していきます。

あまりの寒さにそろそろ諦めて帰ろうかと思ったその時、車の窓ガラスを開けてファンの目の前をゆっくりと走行していく一台の車が現れました。

藤井秀悟でした。

その後も藤井は、車を停めて出待ちしていたファンからの手紙やプレゼントをきちんとすべて受け取ると、

去り際にクラクションを「プップッ!」と2回鳴らし颯爽と車を発進させ帰っていったのでした。

スターだ!!
誰が何と言おうとこの人はスターだ!!

まさかこの期に及んで、藤井秀悟のファンになるとは思ってもいませんでした。

 

 

というわけで、『プロ野球戦力外通告 クビを宣告された男達』で、テレビを通して見る野球選手にはものすごい悲壮感や重苦しいものを感じていました。

ですが、今回こうしてトライアウトの現場にやってきて、大勢の観客が選手を見るために球場に足を運んで客席が埋め尽くされたり、

選手がファンから囲まれている姿を間近で見ると、やはりそれはスター以外の何者でもなく、テレビで見るよりも悲壮感とか重苦しい雰囲気は感じられませんでした。

 

 

あと、単純に球場やその周辺がのどか過ぎてちょっとレジャー気分になってしまいました。

あまりに気持ちいい環境なので、何となく選手も清々しい気持ちでプレーを楽しんでいるようにも見えました。

なので、12月30日の夜10時からTBS系列で放送される
『プロ野球戦力外通告 クビを宣告された男達』は、以前とはちょっと違う気持ちで見られるんじゃないかと思うので注目してみようと思います。

 

 

アイドルと野球が好きです。野村克也本の研究をしています。好きなプロ野球の名シーンは、2008年日本シリーズ第7戦の8回表2死1塁から5番・野田が四球を選んで出塁するところです。好きなホームラン談話は、G.G.佐藤がライオンズ時代に札幌ドームでホームランを打ったときの「ススキノよ、ありがとう」です。