弁護士・理崎智英さんが、離婚にまつわるさまざまなお悩みにお答えします。

今回のご相談者は、義母との関係がうまくいかず夫と離婚したいと悩んでいます。

<相談内容>
義母からの過干渉がひどく、夫はまったく味方になってくれません。もう精神的に限界なのですが、「義母が嫌い」という理由で離婚を切り出すことは法的に認められるのでしょうか?(40歳・女性)

配偶者との協議(話し合い)で離婚を目指す「協議離婚」の場合、離婚理由は問われません。そのため、お互いが合意さえすればどのような理由であっても離婚は可能です。

今回の相談者のケースも「義母が嫌い」という理由で離婚したいと夫に伝え、夫が了承すれば離婚できます。

1. 夫が離婚を拒否した場合は「離婚事由」が必要

一方、夫が離婚に応じない場合、協議離婚はできません。妻が離婚を希望する場合は、まず家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります。調停離婚を経て、それでも夫が応じなければ最終的に離婚訴訟を起こす必要があります。

離婚訴訟で離婚が認められるためには、法律が定める「離婚事由」(民法770条1項各号)が必要となります。具体的には、離婚したい理由が次のいずれかに当てはまる必要があります。

1. 配偶者に不貞な行為があった

2. 配偶者から悪意で遺棄された(理由なく家を出たり生活費を払わないなど)

3. 配偶者の生死が3年以上明らかでない

4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがない(2026年4月1日以降に離婚する場合には適用なし)

5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

今回のケースは1~4には該当しないため、5の「その他、婚姻を継続し難い重大な事由」が認められるかどうかがポイントになります。

5が認められるには、単に夫婦仲が悪いだけでなく夫婦関係がかなり悪化し、もはや修復不可能な状態にまで陥っていると言える必要があります。

2. 裁判所が見るのは「妻と夫の関係」

離婚訴訟で裁判所が見るのは、あくまで「夫婦関係がどのような状態になっているか」です。

義母からの過干渉がひどく妻と義母との関係が悪化していても、夫婦関係が修復不可能な状態にまで陥っていなければ、「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとは言えません。そのため、5の要件を満たさず離婚は認められません。

一方で、夫が義母の側につき妻の味方を一切せず、妻と義母との関係修復のために何も努力をしないような場合があります。そのような状態が長期間続き、夫婦関係が修復不可能な程度にまで破綻している場合には、5の要件を満たし離婚が認められる可能性があります。

義母との関係を理由に離婚が認められるかは、義母との関係の悪さそのものでは判断されません。重要なのは、それが原因で夫婦関係がどこまで破綻しているか(修復不可能な状態なのか否か)です。