「予選突破に黄色信号」「関塚ジャパン自立突破消滅」と、2月5日(日)の試合後から翌日にかけて、悲観的な報道が大半を占める。そう、天王山と言えるロンドン五輪アジア最終予選・シリア戦で1-2と敗れたU-23日本代表のことである。
 


(日刊スポーツ東京版2/6付紙面より)

 
  ロンドン五輪には各組1位しか突破できない。シリアと日本は同じ3勝1敗、得失点差+4ながら、総得点はシリアが8、日本は7で首位の座を明け渡した。グループ2位の3チームはベトナムでのアジアプレーオフを戦い、勝ち抜いた1チームがセネガルとの大陸間プレーオフで激突するのだ。ただ、プレーオフの話は早計だろう。U-23日本代表の1位奪還のチャンスは、シリアの結果次第だが決して低くない。

  そもそも、今回の結果は決して予想外ではない。11月のホームでのシリア戦は「良くて引き分け、内容的には負けゲーム」だったが、86分に大津のダイビングヘッドで勝ち点3を手繰り寄せた。この代表チームはベストメンバーを組めずにきたが、シリア戦に臨んだメンバーもベストとは程遠い人選である。前戦の主役・大津(ボルシアMG)をはじめ、香川(ドルトムント)、宇佐美(バイエルン)、宮市(アーセナル)ら海外組は召集が叶わなかった。原口(浦和)は同僚を怪我させた謹慎のため選出されず、清武(C大阪)もケガで離脱した。原口、清武に代わる活躍が望まれた山崎(磐田)は試合開始18分に負傷退場し、長期離脱が濃厚である。1~2枚どころか、ベストの攻撃陣から5枚落ちでは、勝利が程遠いのは明白だ。 

  試合時期も悪かった。1月15日からのグアム合宿で万全を期した日本代表だが、五輪代表だけではなくA代表も、シーズンオフの2月のゲームは精彩を欠いてきた(昨年1月のアジアカップは見事優勝を果たしたが、2010年2月の東アジア選手権は韓国に1-3で敗れ、中国にスコアレスドローとなった)。ヨルダンのボコボコのピッチに悩まされる前に、トップフォームとは程遠いコンディション、戻りきらない試合勘で苦戦したのだ。そんな中、武力弾圧がまかり通る国内情勢の不安を感じさせないシリアに、小気味いいサッカーを展開されれば、敗北は必然の結果と言える。 

  U-23日本代表の1位奪還のシナリオをこうだ。第5戦は2/22(水)22時に日本はマレーシアとのアウェイ戦、24時30分にシリアはバーレーンとのアウェイ戦に臨む(バーレーンは1勝2敗・4得点7失点の3位、マレーシアは3敗・2得点7失点の4位)。シリアは初戦・バーレーンに3-1で完勝しているが、アウェイでは大量得点は望めず引き分けに終わる危険性を孕む。一方マレーシアと対する日本は精神的に有利に立つ。初戦は2-0に終わったが、5点入ってもおかしくない展開だった。しかも、試合時間は日本の方が早い。シリアの選手たちは結果を知らなくとも、ジャタル監督らにプレッシャーをかけることができる(もちろん、第5戦で得失点差で逆転できなければ、日本の予選突破の可能性は一気に低くなるが……)。 

  次のマレーシア戦には清武、山崎は間に合わない。香川の召集も可能性は低いだろう。ただ、宇佐美や宮市ら海外組を呼べばいいというものでもない。マレーシア戦前にテストマッチはない。練習試合や紅白戦でコンビネーションは磨かれない。海外組を召集するとしても、U-23日本代表で試合を重ねている大津以外は、フィットしないかもしれない。スピードあふれる永井とボールをキープできる大迫は、胸に期するものがあるはずだ。五輪代表チームに戻るであろう原口も、挽回の機会を待ち望んでいる。次のマレーシア戦では「あそこで決めておけば……」ということは許されない。「大量得点を決める」という決意が焦りを生むか、爆発力となるかは、彼らの資質にかかっている。そして、それは彼らアタッカー陣が一皮向けるチャンスでもある。最後に今回の五輪代表チームは、ベストメンバーを組めないままだが、名前だけで戦わない、タフさがあることを最後に付け加えておきたい。
 

あおやま・おりま 1994年の中部支局入りから、ぴあひと筋の編集人生。その大半はスポーツを担当する。元旦のサッカー天皇杯決勝から大晦日の格闘技まで、「365日いつ何時いかなる現場へも行く」が信条だったが、ここ最近は「現場はぼちぼち」。趣味は読書とスーパー銭湯通いと深酒。映画のマイベストはスカーフェイス、小説のマイベストはプリズンホテルと嗜好はかなり偏っている。