ここがステキだよ麻布学園
教員が生徒を愛しすぎている

筆者:校内を見学して改めて思いましたが、やっぱり麻布学園は変わってると思います(笑)。授業も公立にはない独自のものが多いですよね。神田さんの本でも触れられていましたが、彦坂先生は授業でブーメラン作りを教えるためにオーストラリアのメーカーに制作方法を問い合わせたこともあるのだとか……。

彦坂先生:そうなんです(笑)。

筆者:そこまでしてくれる先生ってそうそういません。

彦坂先生:そうかな? ちなみにこのブーメランは昨年の生徒の作品で、ちゃんと飛ぶんですよ。これを作ったのはダンス部の部長なのですが、逆立ちしているダンスポーズを私がカメラで撮影して、それを元に本人がブーメランの形にデザインしたんです。

 

 

筆者:これはすごい! かなり本格的な出来栄えですね。これまでの校内見学では麻布の生徒に対してやんちゃなイメージだけが先行してしまったのですが、実は授業に真面目に取り組む子も多いんですね(笑)。

彦坂先生:そうですね(笑)。校則がない自由な学校であるだけに、時には度を超えた問題を起こす生徒もいますし、そういう生徒にはきちんと指導します。締めるところはきちんと締めながら、生徒の自由を問う姿勢は貫きたいと思うんです。

神田さん:この学校の先生方は生徒を放任しているようで、実はしっかりと見ているんです。毎週の職員会議は平気で5時間を超えるし、各教科の教師陣も徹底的に練ったカリキュラムを作り上げている。

筆者:一見すると変な学校なのに、そこらへんをきちっとやってるのがカッコよくてうらやましいなー。ズルい(笑)。

神田さん:それは僕が麻布を取材していたときにも感じたことです。

筆者:ぼく今からでも麻布に入れませんかね? 本当に人生やり直したい。

神田さん:いや、そこは諦めろ。もう遅い!

 


青白いガリ勉のイメージからかけ離れたやんちゃな生徒たちを熱心で風変わりな教師陣が支える麻布学園。実際に取材してみると、その校風はやっぱり少し変でした(笑)。しかし同時に、この学園の根底に流れる自由の心は、生徒と教員の信頼関係の上に成り立っているものだということも肌で感じ取れた気がします。

今回取材にご協力いただいた神田さんの著書『「謎」の進学校 麻布の教え』には、まだまだ麻布学園の知られざる魅力が詰まっています。こんな自由すぎる学校の生徒達が、なぜ次々と東大に合格してしまうのか。気になる方はぜひ読んでみてください!

 

【書籍情報】
『「謎」の進学校 麻布の教え』(神田憲行 著)

50年以上にわたって東大合格者数ランキングのトップ10に名を連ねながら、校則も無ければ、大学現役合格にもこだわらない麻布学園。その独自の教育と魅力を解き明かすべく、現役の生徒から司書教諭、養護教諭、麻布が輩出した各界OBの証言までを徹底取材した話題の新書。820円(税込)/256P/集英社新書

【著者情報】
神田憲行(かんだ・のりゆき)
1963年、大阪生まれ。ノンフィクションライター。関西大学法学部卒業後、故黒田清氏の事務所を経て独立。1992年から約1年間、ベトナムのホー・ チ・ミン市で日本語教師生活を送る。また夏の高校野球を20年以上にわたって取材している。これらの経験から教育、高校生を取り巻く問題に興味を持つようになり、本書に至る。

 

株式会社エディトル所属。IT系雑誌やムックの編集業のほか、コミック、文芸、お笑い、ライフハックなど多分野の記事を執筆。絵が描けないくせにイラストのディレクションに手を出し始めた今日この頃、この仕事はなんでもありなんじゃないかと思い始めている。