(左から)ゆりやんレトリィバァ監督、南沙良 (C)エンタメOVO
お笑い芸人のゆりやんレトリィバァが映画監督に初挑戦した『禍禍女』が絶賛上映中だ。「好きになられたら終わり」という「禍禍女」を題材に、ゆりやん自身のこれまでの恋愛を投影しながら描いたホラー映画。ゆりやん監督と早苗役で主演した南沙良に話を聞いた。
-今回は、どういう経緯で監督をすることになったのですか。
ゆりやん ずっと映画が大好きで、特に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(85)に憧れていました。それで、5年前にある番組で生意気にも「映画監督をやりたい」みたいなことを言ったんです。そうしたら、プロデューサーの髙橋(大典)さんがたまたまそれを見ていて、吉本興業に「映画監督しませんか?」ってお電話をくださって。それで「したいです」となって、今日になります。本当にラッキーでありがたいです。
-ストーリーのアイデアはご自身の体験からということですが…。
ゆりやん そうなんです。最初に髙橋さんとお会いした時に、オリジナル作品にするならどういうものがいいかを話し合いました。自分がコントを作る時も、自分が言いたいことを中心にせりふを作っていくので、それなら、自分は恋愛体質なので恋バナがいいかもしれないと。「好きな人に振られても、とことん追い駆ける」って言ったら、髙橋さんが「それはホラーです」と。というわけで、自分が好きになって追い駆けても、みんなに怖がられていつも逃げられていた。「ゆりやんに好かれたらもう終わりだ」と言われた経験を基に、髙橋さんと内藤(瑛亮)さんと3人で話のベースを作っていった感じです。だから、もうほぼドキュメンタリーです(笑)。
-南さんは、初めて脚本を読んだ時はどんな感じでしたか。
南 初めて脚本を読ませていただいた時は、完成形ではなかったので、もう少し落ち着いたトーンでした。でも、お芝居をしていく中で、もっとこうした方がいいんじゃないか、こうしたら面白いんじゃないかと話し合いながら、ああいう形になりました。でも、もちろんインパクトはすごくありました。ミュージカルシーンとかも、どうやってお芝居をしていくのだろうと思いましたし、ワクワクするような脚本だと思いました。
-実際に演じる上で、何か気を付けたことや工夫したことはありましたか。
南 初めて挑戦することが多かったので、エネルギーを切らさないようにすることをすごく意識しました。全部のシーンが、気持ち的にも体力的にも結構エネルギーを使う感じだったので。あとは、ゆりやんさんが「もっとこうした方が面白いんじゃない」と言ってくださったりもしたので、それを参考にしながら、自分の中に落とし込む作業をしました。
-ホラーとコメディーには紙一重のところがありますが、今回はそうしたことは意識しましたか。
ゆりやん 今回は、コメディー要素を入れようという気持ちは全くなくて、本当にみんなに怖いって言ってもらえるものを目指しました。でも、確かにホラーとコメディーには紙一重のところがあって、ホラー要素を足すのは、お笑いのボケを足す感覚に似ています。こうしたらびっくりさせられるんじゃないか、こうやったら怖いんじゃないかと考えていくうちに、勝手に面白くなっていくところがあります。例えば、暗がりに人がふーって立っていたらホラーだけど、「何しとんねん」って言ったら笑うじゃないですか。自分が思いついたアイデアに、自分では突っ込まないけど、お客さんに「これ何やねん、何しよんね」とか突っ込んでもらえたら、そこがコメディー要素になるのかなと思います。
-南さんは早苗というキャラクターをどのように捉えました。
南 早苗自身はいたって純粋な気持ちというか、素直な気持ちで動いているんですけど、それがはたから見ると狂気的でおかしい。けれども、そこは一旦忘れて、早苗の純粋な気持ちを大切にして演じました。
ゆりやん 実は早苗のいろんなところに私自身をちりばめているんですけど、早苗に一番強い思いを乗せているので、何かソウルメートのような感じがします。南さんにやってもらえてよかったです。
-多彩なキャストに驚きました。
ゆりやん 南沙良さんにはオファーをしましたが、オーディションも開催させていただいて、シェアハウスのシーンは、髙石あかりさんと九条ジョーくん以外は皆さんオーディションに来てくださった方たちです。それから、もちろん斎藤工さんにもオファーをしましたが、もともとプライベートで斎藤さんに興味を持っていました。ですが、一切こちらを振り向く気配がなかったので、それなら「今度映画を撮るので出てください」とお願いしました。そして、あのような目に遭っていただきました。いろんな意味でぶっ飛んだ役だったので、よくやってくださったなと。ありがたいです。
-監督として苦労した点や、心掛けたことはありましたか。
ゆりやん 当たり前のことですが、まず、自分の意見をしっかりお伝えすることを心掛けました。でも意外とそれが難しい。つい図ってしまったり、ちょっと遠慮してしまうという気持ちをなるべく出さないようにしました。あとは、お笑いの時は自分のネタは自分で作るという思いがあって、人の言うことを聞かないとかいろいろと言われていますが、映画はみんなで作るものなので、みんなの意見をどんどん吸収して、いろいろと教えてもらいながら、吸収しながら、その中で、自分が一体何が好きなのかということをしっかり自分に問い掛けて、選択させてもらったり、進んでいくということもありました。
-完成作を見た印象は。
南 もともと、自分が出た映画や作品はあまり冷静には見られないタイプなのですが、自分でも、すごく振り切れていて、よくここまでやったと思えたし、面白いものになっていると思いました。思わず目をつぶりたくなるところもありましたが、それでも、「何かすごい、どんなふうになっていくんだろう」と思って、見入っていました。スタイリストの方が「衝撃的過ぎて一瞬も目が離せない」とおっしゃっていましたが、まさにその通りだと思いましたね。
ゆりやん 私は、撮影から編集、仕上げと、ずっとほぼ毎日見ていたので、新鮮な気持ちでは見られなかったんですけど、やっぱり大きなスクリーンで見た時は、スタッフさんの付けてくれた音や、俳優さんのお芝居は本当にすごい、やっぱり映画ってすごいなという感動がありました。エンドロールでゆりやんレトリィバァ監督って出た時には、感慨深かったですし、ありがたいと思いました。それから、自分だと思って共感していた早苗のことを、こんなやつおったら嫌やな、こんなやつおったらやばいやろと思えるようになりました。
-最後に、映画の見どころも含めて、これから見る人や読者に向けて一言ずつお願いします。
南 早苗は狂気的な役柄ではあるのですが、演じていても、映画を見ていても、どんどん愛らしく思えてきます。どこかで共感してしまうキャラクターだと思うので、その魅力が見る方にも伝わればいいなと思います。
ゆりやん 私はこの映画を、今まで自分を振った人に復讐(ふくしゅう)したいという気持ちを込めて作りましたが、出来上がってみると、間違っていたのは私だったということが分かりました。それからはまがまがしい気持ちはなくなって、すがすがしい気持ちの”すがすが女”になっています。なので、皆さんの中でも、恋愛に対してまがまがしい気持ちを持っている方がいっぱいいらっしゃると思うんですけども、そんな方は好きな人を誘ってすぐにこの映画を見てください。この映画を見た後で告白されたらもう振ることはできないと思います。だから“恋愛成就ムービー”なんです。ぜひ映画館でお待ちしております。でも本当に入口で私が待っていたらどうしますか。怖いですよね。
(取材・文・写真/田中雄二)







