現在名古屋で、とても名古屋らしいローカルイベントが開催されている。
その名も「なごやめし博覧会」。
博覧会と言っても、ひとつの会場に名古屋めしが一堂に、という物産展のような形式のイベントではない。
名古屋のご当地グルメを提供するリアル店舗が参加店となり、客は専用チケットである“小判”を持って、市内の好きな店舗の対象メニュー・商品を食べたり買ったりする食べ歩き形式のイベントである。
参加店舗の規模は大きい。手羽先の「世界のやまちゃん」、味噌煮込みうどんの「山本屋本店」など全国区の有名店を含む、なんと市内の272店舗が参加! キャッチフレーズに掲げている“史上最大級の食べ歩きイベント!”というのも、看板に偽りなしといったところか。
さて、名古屋めしと言われて皆さんは何を思い浮かべるだろうか?
なごやめし博覧会でカテゴリーとして挙げられているのは「手羽先」「味噌カツ」「ひつまぶし」「海老フライ」「きしめん」「味噌煮込みうどん」「名古屋コーチン」「あんかけスパ」「鉄板スパ」「天むす」「台湾ラーメン」「味噌おでん」「どて煮」「モーニング」「小倉トースト」「ういろう」といったラインナップ。
ちなみに名古屋在住である筆者はすべて食べたことがあるし、毎週これらの中の何かを口にしている。でもそれは特別なことではない。名古屋人の多くが同様であろうと思う。
ポイントはココである。B級グルメ・ご当地グルメブームの昨今、多くの場合は“町おこし”を旗印に新たな盛り上げを企画する中で誕生してきている。しかし、名古屋めしは違う。これだけ多くのメニューが、すべて名古屋人の日常食であり、何ら喧伝することなく、自然に全国へと伝播されてきたという事実。
長い歴史のなかで形成されてきた名古屋めし。それは、しっかり大地に根ざした文化であり、一過性のブームとは明らかに性格を異にするものである。しかし、ここにきて名古屋めしを名古屋の観光資源として活用しようという動きが見られるようになってきた。名古屋人が欲を出し始めたのである。少し心配だ。作為が働き始めると本来の姿が失われがちなもの。もちろん宣伝することは悪いことではない。やり方次第だ。たとえば古い町並みを厳しい基準で保存し、本来の姿を守ることによって観光資源とする。これは正しいやり方。同じように、名古屋めしの本来の姿を見失わないように上手く活用してほしいものである。
アンケートによると、名古屋を観光する際のいちばんの目的は「名古屋めし」だと言う。だからこそ、張り切りすぎることなく、浮き足立つことなく、今まで醸成してきた名古屋めし文化をそのまま披露しようではないか。作為はいらないのだ。
「なごやめし博覧会」
【開催期間】2011年10月7日(金)~11月20日(日)
【会場】名古屋市内全域
※詳細は公式ホームページ