辰巳雄大(左)と戸塚祥太 (C)エンタメOVO

 戸塚祥太と辰巳雄大が出演する「BACKBEAT」が、4月17日から開幕する(プレビュー公演は4月12日)。本作は、世界的ロックバンド・ビートルズの結成初期を描いた1994年公開の伝記映画『BACKBEAT(バックビート)』をイアン・ソフトリー監督自ら舞台化した作品。4人編成で知られているビートルズが当初は5人で、メジャーデビューを待たずに袂(たもと)を分つことになるバンドメンバーが存在したという史実が基になっており、日本では、2019年に初演、2023年に再演された。20曲以上の楽曲を生演奏で披露するのも見どころで、キャストたちの熱い演奏も注目されている。初演からスチュアート・サトクリフを演じる戸塚祥太と、ジョージ・ハリスン役の辰巳雄大、“FINAL”と銘打たれた今回の公演への意気込みを聞いた。


- “FINAL”となる再々演が決まったときの心境を聞かせてください。


戸塚 奇跡だなと思いました。こうして再々演ができるとは思ってもいなかったので、まさかという思いです。1回1回をお客さまに届けることを続けてきた結果、すごいことが起きたのだとうれしい気持ちです。今回、“FINAL”と銘打たれていますが、僕たちに花道を作ってくださったのかなと感じて、お客さま、そしてスタッフさんへの感謝でいっぱいです。


辰巳 10代のビートルズを演じるというこの作品に、自分たちがやる意味を持って挑んできました。初演から7年がたち、再び上演できることは本当にすごいことだと改めて感じています。何より劇場に見に来ていただいた方、携わってくださった方、メンバーの間でもすごく愛を感じます。再々演までできることがすごくうれしいです。


-お二人が演じる役柄の魅力を教えてください。


戸塚 僕が演じるスチュアート・サトクリフは、自分の心に正直な人間だと思います。だからこそ、ジョン・レノン(加藤和樹)は惹かれてポール・マッカートニー(JUON)にはあまりよく映らなかった。ジョンとスチュアートは、悪友でいわゆる不良仲間だったのだと思いますが、そんな不良なところも僕は好きです。


-戸塚さんにも不良なところがありますか。


戸塚 僕は不良に憧れているだけで、もうちょっとジメジメしています(笑)。


-辰巳さんはジョージ・ハリスンについて、どのように感じていますか。


辰巳 ジョージは「静かなビートル」と言われているので、おとなしい人だと思われがちですが、ジョンとポールという天才の中にいるからこそ「静か」と評されているだけなんですよ。どの文献を見ても、ジョージがまず人との関係性を作って、フレンドリーに振る舞っているんです。「ジョンやポールと話をするときは緊張するけど、ジョージと話すときだけは心が安らいだ」というスターたちの話も残っているくらい、実はバンドのキーマンなんだと思います。いろいろと調べていくと、ジョージがいなかったらもしかして…と思うようなこともあって。


戸塚 インドも行っていないかもしれないよね。


辰巳 そうだよね。ジョンとポールは天才すぎるので、ジョージが良いクッションになったのかなと。でも、ときには怒ることもあって、「ギターを持っているときが僕の人生の全てになる」という言葉をジョージは残していますが、音楽を奏でているときは自分になれる感覚があったのかなと思います。(ジョージを演じることで)たくさん学ぶこともありましたし、勝手に親近感も持っています。大好きです、ジョージのことが。


-初演、再演を振り返って印象に残っている出来事は?


辰巳 僕はほぼギター初心者だったのに、弾けると言ってこのお仕事を引き受けたんですよ。なので、(印象に残っている出来事は)最初にギターの先生と(演出の石丸)さち子さんとプロデューサーさんが僕の指の動きを見た瞬間です(笑)。「今日はちょっと調子が悪いな」なんて言いながら弾きましたが、本当は初めての指の動きで(笑)。あの瞬間は、僕の人生の中でもかなり印象に残っています。


戸塚 雄大の人生が映画化されたとしたら、そのシーンは絶対に描かれるね。でも、本番できちんと弾けているわけだから、うそではない。すでに事実になっているから。


辰巳 うそを本当にしてやりました! 辰巳雄大の人生の中でも勝負を賭けた瞬間でしたが、それほど「BACKBEAT」に携わりたかったんです。この作品が上演されることを知っていたので、「ギターが弾ける人を探している」と聞いて「これは絶対に『BACKBEAT』だ」と。当時は、F(のコード)がギリギリ押さえられないくらいのレベルでしたが、「弾ける」と言って挑んだ作品でした。もちろん(初演、再演で)すてきな瞬間はたくさんありましたが、あのとき、弾けると言って挑戦していなかったら今の僕はいないので、やっぱり印象に残っています。ときには、人生を賭けた勝負に出ないといけないんだなと思います。


戸塚 岡本健一さんが公演を見に来てくださって、終演後に楽屋で「弾けてたよ」と言っていただいていたよね?


辰巳 めちゃくちゃうれしかったです。「ギタリストになっていたよ。ジョージだったよ」って。

-戸塚さんの忘れられない瞬間も教えてください。


戸塚 僕はJUONくんのお芝居です。物語の後半で、ジョンが「Twist And Shout」を歌う前に、ポールがはやし立てるんですが、そのシーンがすごく好きで、毎回、袖から見ていました。JUONくんにしかできない芝居だと思います。ビートルズのハンブルク時代の青春が詰まっているような音をJUONくんが出すんですよ。個人的に、そのシーンがすごく好きです。


-先日、公演に向けて久しぶりにバンド練習があったそうですが、その感想は?


辰巳 「これだ、これだ」と思いました。


戸塚 自分たちのグルーブが出ているのを感じました。


辰巳 「BACKBEAT」は“FINAL”かもしれませんが、バンド活動は終えたくないですね。初演で集まって、初めてバンドになって、ここまで続けさせていただいているので、いろいろな思いが詰まっているんですよ。JUONくんはもともとギタリストですが、普段は右で弾いているのに、この作品は左で弾いているんですよ。ポールが左で弾くから。それはもしかしたら、ゼロから始める僕より大変だったかもしれない。


戸塚 普段は弾けるものが弾けないというのは、ストレスもあったと思うし、混乱することも多かったと思う。


辰巳 きっと日本でどちらの手でもこれほどハイレベルのギターを弾ける人はほかにいないんじゃないかな。


戸塚 きっとJUONくんのポールが一番大変な役だと思います。


辰巳 そうだよね。ほかのパートはそれぞれの楽器が弾ける人を集めればいいけど、左利きのギタリスト役でお芝居をやってくださる方を探すのは大変だと思います。


-音を合わせてみて、「BACKBEAT」に帰ってきたという感覚はありましたか。


戸塚 事前に個人ではそれほど練習ができなかったので、申し訳ない気持ちでスタジオに入ったのですが、意外と弾けました。


辰巳 僕もやっぱり自然とできました。曲は身についていますね。


-今回、どんなところをブラッシュアップしていきたいですか。


戸塚 すごく抽象的ですが、より丁寧に、かつ大胆にできたらいいなと思っていますね。


辰巳 演奏の練習にもかなり時間を割いていますが、とはいえ、お芝居の中でストーリーに寄り添って演奏するものなので、普通のライブとは違っていて、どうしても崩さなくてはいけないところも出てきます。例えば、普通のバンドだったら絶対に抜けてはいけないベースが抜ける瞬間を演じていかなくてはいけない。なので、クオリティーを上げることで、暴れるための準備をしていき、本番では10代のビートルズとしてロックをして、教科書通りに行かないものを作れたらいいなと思います。


戸塚 そのときにしか出せないものを毎回、つかみにいきたいですね。


辰巳 やっぱり毎日、違うんですよ。お芝居が変われば演奏のノリも変わる。


戸塚 普通のミュージカルでは、オーケストラの方々が楽譜を見ながら演奏されていらっしゃると思いますが、僕たちは楽譜も見ていない。それに、自分たちの中では厳密に演奏することが最優先ではないんですよ。テンポが変わっても、そのときの心境が音楽に乗せられる方がいいんです。今回だけのビートがそこに生まれると思います。


 「BACKBEAT」は、4月12日に水戸市民会館 グロービスホールでのプレビュー公演のほか愛知・大阪公演を経て、5月3日(日・祝)~17日(日)に東京・EX THEATER ROPPONGI、兵庫で上演。