森崎ウィン【スタイリスト:森田晃嘉/ヘアメーク:宇田川恵司】(C)エンタメOVO
人生に退屈していた平凡な主婦が金(きん)の魅力にとりつかれ、100億円相当の金の茶わんを盗み出そうとする姿を描いたクライムコメディー『黄金泥棒』が4月3日から全国公開される。実在の事件から着想を得た本作で、主人公の主婦・美香子(田中麗奈)と駆け引きを繰り広げる金城役を演じた森崎ウィンに話を聞いた。
-最初に脚本を読んだ時の印象からお願いします。
これが実話だということに驚きました。どこまでが実話なのか、本当に金(きん)をあぶったのかなどといろいろなことを考えてしまいました。田舎から来た老夫婦が、段ボールに大金を入れて持ってきたのも実話だと聞いて驚きました。田舎で農業などをやっていらっしゃる方にもすごいお金持ちがいるんだなと思いました。脚本を読んで純粋に面白いと思ったし、僕がやる金城という役が相当なクズだと感じました。
-演じる上で考えたことはありましたか。
最初に自分が演じる金城を客観的に見てみました。でもやっぱり嫌なやつでした。そこからは役の読み方を変えて、なぜ彼がそこまで振り切った行動を取れるのかを考えました。それで、彼には大きな野望があって、成功をつかむためにはどんな泥水でも飲んでやるみたいな強い意志があって、それが彼の行動の原理につながっているのかなと自分なりに解釈をして演じさせていただきました。
-役をつかむのに苦労した部分もあったとか。
萱野(孝幸)監督が脚本も書いているので、監督が思い描いているのがどのトーンの芝居なのかと考えました。嫌なやつをだだ漏れの感じで見せてほしいのか、そうではなくて内から漏れ出てくるみたいな感じなのかとか、いろいろとお話し合いをさせていただきながら調整していきました。役との向き合い方で言えば、冒頭のシーンで、この人は笑顔がすてきないい人で、すごくできる営業マンなのかなと思わせておいて、最後、田中麗奈さん演じる美香子を追い込んでいくところで、イライラして素が出てくるところとのギャップを埋めるのがなかなか大変でした。
-今回演じてみて難しいと思ったことはありましたか。
難しいと思ったところは、いい意味で萱野監督の頭の中が見えないことでした。ここは何を求めているのか分からない瞬間が何度かありました。でも、何が正解かを探りながら、自分の中で考えれば考えるほど、自分の引き出しが増えるというか、クリエーティブな脳になっていくし、ちょっとつかんだかなと思ったら、違ったとか。そういうことがまた楽しかったです。あとは、金城がただの嫌なやつじゃないというところのあんばいが難しかったです。現場で演じながら、だんだん自分が嫌なやつになってきたと思ったことを覚えています。普段の話し方も、何となくこの役に染まり始めてきている気がして、自分の嫌なところがどんどん出てきていると感じました。でもそれが面白くもありました。それと長回しのシーンが多かったので、長ぜりふの緊張感もありました。
それから、撮影自体も結構大変でした。黄金の間のシーンのところでは本物が並んでいるんです。なので、ちょっとでも触れて落としたりしたら大変なことになるという緊張感がありました。ただ、緊張もしましたけど、途中からだんだん慣れてきて、数百億円の中にいるという感覚がどんどん薄れていくんです。慣れって怖いものですよ(笑)。
-コメディーを演じることについてはどう思いましたか。
基本的には、とことん真面目に演じるということですかね。脚本を客観的に読んでいると、ここは面白いなと思うところがありますが、いざ演じるとなった時にそれを意識し過ぎると駄目になる気がします。だからあまりやり過ぎないようにする。今回は、演じながら萱野監督にさじ加減をコントロールしてもらうという感覚でした。でも、コメディーはやっぱり楽しいです。現場も和気あいあいとした雰囲気になるし、今回は座長が田中さんでしたから、明るさという面でも、すごく引っ張ってくださったので心強かったです。自分はただそこにいればいいという感覚でした。コメディーができる俳優は本当に芝居ができる人だと聞いたことがありますが、すごく分かる気がします。そういう意味でも、今回はコメディーをやれるチャンスだったので、自分の技量を磨くことも含めて、思う存分、楽しくやらせていただきました。
-田中麗奈さんとの共演はいかがでしたか。
僕がこうしてテレビや映画に出させてもらう前から出ていらっしゃいますし、一方的に見ていた方なので、そもそも共演できたことをすごく誇りに思いますし、本当に光栄です。現場に入る前に、何回かワークショップがあったんですけど、その時から田中さんのお芝居に対する情熱の高さを目の当たりにしました。1つのシーンでも僕には見えない観点があって、この角度から見ているんだとか、演技の引き出しも多くて、話を聞いているだけで勉強になる部分がたくさんありました。あとは、一緒にお芝居をさせていただく上で、「ウィンくんとやっていて楽しいな」と思っていただけたらと考えていたので、仕掛けるところは仕掛けつつ、ビビらず、だけどリスペクトは残して演じさせていただきました。
-金城は、成功を夢見て、すごくあくどいことをするんだけど、ちょっと憎めないところがある。昔マイケル・J・フォックスがやっていた役と通じるところがあると思いました。
それはすごくうれしいです。ただ女性には嫌われますよね。これは多分美香子さんには勝てないだろうなとは思いました。
-完成した映画を見てどんな印象でしたか。
思っていた以上にテンポが早いと感じました。撮っていた時の感覚だと、まったりしそうだと思ったんです。長回しも多いし、ちゃんと返しも撮っていたから、もっと長くなるのかと思ったら、2時間ないですよね。だからテンポがよかったと思いました。自分が出ていることは別にして、客観的に1本の映画として見ても面白いと思いました。金をあぶってもそうはならないだろとツッコんだり、僕が金を勧めているシーンのお客さんのキャラが強かったことで、ちょっと現場を思い出したりしながら、楽しく見させてもらいました。
-映画の見どころも含めて、観客の方々や読者に向けて一言お願いします。
特別な人になりたかった美香子が主人公なので、特別な人って何だろう。自分にとって特別なものって何だろうといったことを考えさせられるような場面もありますが、基本的には『黄金泥棒』って何だろう。ちょっと気になるから見てみるかぐらいの軽い気持ちで見られる作品だと思います。あとは、リアルな金をいっぱい使っていて、よっぽどじゃないと黄金の間に行く機会などないと思うので、その輝きを見てもらえたら面白いんじゃないかと。ギンギラギンの金を見ているだけで元気になれます。その金が輝いている中でツッコミどころ満載の泥棒劇が繰り広げられます。だけど最後には、もしかして今の生活に満足しているように自分に言い聞かせているのかもとか、自分がやりたいことって何だったんだろうとか、考えさせられるところもあります。そこが面白いと思います。
(取材・文・写真/田中雄二)







