穂志もえか【ヘアメイク:渡嘉敷愛子/スタイリスト:高山エリ】(C)エンタメOVO

俳優・プロデューサーの賀来賢人と監督のデイヴ・ボイルが共同で設立した映像製作会社「SIGNAL181」の長編映画第1作となるホラー『Never After Dark/ネバーアフターダーク』が6月5日から全国公開される。死者の姉と生者の妹による霊媒師コンビが山奥の洋館に巣食う凶悪な亡霊に立ち向かう姿を描いた本作で、妹の愛里を演じた穂志もえかに話を聞いた。


-最初に脚本を読んだ時はどんな印象でしたか。


 少しファンタジーっぽいような印象を受けて、このキャラクターをどのような説得力を持って演じればいいのかと考えました。それで、この映画を作ろうと思ったきっかけと、一番伝えたいことを、デイヴ(・ボイル監督)に直接メールをして聞きました。すると「僕の人生で実際にあった出来事や宗教観を踏まえた上で、一番怖いのは人間だということと、目に見えない世界よりも現実の問題に対処することの重要性を伝えたい」という返事が来ました。それを知った上で脚本を読み直してみると、全然違ったテイストに思えて、デイヴの信念に賛同できて、これなら私の思いも乗せられると思いました。どういう思いが根底に流れているのかを知ることで、映画への解像度みたいなものがだいぶ変わると思いました。


-霊媒師の愛里というキャラクターを、どのように理解しましたか。


 デイヴともいろいろと話した上で、寂しさみたいなものが根底にあるキャラクターだと思いました。彼女の生い立ちも含めて、死んでしまったお姉さんの霊に「何でいつまでもここにいるの」とか、「早く成仏しなよ」と言いながらも、実はお姉ちゃんに依存している部分も多い。そういう矛盾が生まれるほど、複雑な心の持ち主であり、ある意味未熟な面もあるキャラクターだと思いました。でも、淡々と霊媒師として生活しているところは、たくましさもあるような気がします。


-そういう複雑なキャラクターを演じるのは難しかったですか。


 愛里は、私には見えないものが見えるという設定なので、彼女にはどういうものが見えているのかを理解しないで、疑問を持ったまま撮影に臨むのはよくないと思って、デイヴにいろいろなことを事細かく聞きました。例えば、ベールの向こう側の世界ではどういう体感なのか、向こう側では夢で逃げる時のように体がゆっくりとしか動かないのかとか。あとは、向こう側で手をつかまれたら現実の体にもあざがつくのか、そういう物理的な干渉がどこまであるのか、霊媒でのルールみたいなことも聞いて、愛里にとってはそれが当たり前なんだと思えるぐらいに落とし込めたのがすごくよかったと思います。デイヴが、ディスカッションが好きなタイプで、「どんどん聞いてきてほしい。何ならアイデアも歓迎だ」というスタンスでいてくれたので、とても助かりました。


-穂志さんにとってホラー映画はどのようなイメージですか。


 正直なところ、私自身は今までホラーというジャンルにはあまり注目していませんでした。ただ、怖くて叫ぶ系よりも、例えばジョーダン・ピールの作品のような、監督の思想や信念みたいなものが感じられるものは面白く見られます。今回もデイヴの伝えたいことや信念が分かったので、そこに共感して、いわゆるホラーとは思わずに参加できたような感じがありました。

-ジョーダン・ピールの映画は、アメリカではブラックコメディーとして捉えられていますね。その点は日本人とは感覚が違うと思います。穂志さんはドラマシリーズの「SHOGUN 将軍」にも出ていますが、外国人の監督やスタッフと一緒に仕事する時に違いを感じたりはしますか。


 ホラーコメディーという点では、実はデイヴも同じようなことを言っていました。テキサスの映画祭でも、この映画を見た観客が笑ったんです。そういう反応は面白かったです。「SHOGUN 将軍」の時も、私が普通にシリアスなお芝居をしているのに、なぜかスタッフのみんなが笑っていたりして。まあ面白がってもらえるのはうれしいことではありましたが、観点が違うのかもしれないですね。


-だから、ゾンビ映画などもそうですけど、ホラーなのに笑ってしまうことがあります。ホラーとコメディーは紙一重なところがありますね。


 そうですね。この映画は、日本ではホラー映画として打ち出していますが、そう考えると、海外の人たちのように、「面白いもの見ようぜ」とか、「ちょっとお化け屋敷に行こうぜ」みたいなノリでもいいのかなと思いました。そうすれば怖いのは苦手という人にも見てもらえるかもしれませんし。


-今回、プロデューサーでもあり、共演もした賀来賢人さんはどんな感じの方でしたか。


 プロデューサーとしてとても信頼ができる方だと思いました。賀来さんの製作会社は、メンバーもわずかな人数しかいませんが、ほかの製作会社と組むわけでもなく、いろんなところから出資を集めることもしていません。だから本当に風通しがいいというか、自分たちが全ての責任を取るという気構えで奮闘していらっしゃいます。「どんな問題も絶対に解決するので任せて」という言葉の説得力は、やっぱり賀来さんの現場での言葉や振る舞いから生まれてくるものだったと思いますし、ご自身の長年のキャリアから、現場のスタッフやキャストがどうしたら快適に過ごせ、モチベーションを保てるのかということも分かっていらっしゃるので、そういう現場の環境作りをはじめ、いろんな面で支えていただいたと思っています。


-完成作を見てどう感じましたか。


 冒頭から効果音も含めてたくさん音楽がかかって、かなりエンタメっぽく、見やすく仕上がっていると思いました。静かに緊迫感をあおっていく感じではないところに最初は違和感がありましたが、いい意味で期待と違ったというか、最終的にはいい違和感だったと思います。あとは、試写を見に来てくださった方からも、「画が違う。あまり日本の映画っぽくない」とおっしゃっていただくことが多くて。それは、監督も撮影監督もアメリカの方で、彼らのエッセンスや美的感覚がよく出ているからだし、日本の技術スタッフといいコラボレーションができた結果、かなりユニークな、今までに見たことがないような映画になっている感じがしました。


-やはり監督の意志が大きく反映された映画という感じですか。


 そう思います。それは一貫してあったと思うし、それが見てくださる方にも伝わるといいと思います。今日、インタビューをしていただいている中で、現実の問題に向き合うということは、いろんなことに置き換えられると思いました。自分の問題も、世の中で起こっていることも。何かそういうふうに、見た方々のそれぞれが、ご自分のこととして考えられたら、ただ「怖かったね」のホラー映画では終わらない深みが出てくると思いました。


-これから映画を見る観客や読者の皆さんに向けて一言お願いします。


 私自身も、あまり見たことないようなユニークな映画になっていると思います。どのように受け取っていただいてもいいので、何より楽しんでいただけたらというのが一番にあります。もし面白いと思っていただけたら、口コミが大事なので広めていただけるとうれしいです。よろしくお願いします。


(取材・文・写真/田中雄二)