2025 LOS DESERTORES FILMS, A.I.E., TELEFÓNICA AUDIOVISUAL DIGITAL, S.L.U.,FILMES DA ERMIDA, S.L., EL DESEO DA, S.L.U., URI FILMS, S.L., 4A4 PRODUCTIONS

「シラート」(6月5日公開)★★★


スペイン産の異色ロードムービー


 砂漠でのレイブパーティー(音楽イベント)に参加したまま行方が分からなくなった娘を捜すため、ルイスは息子のエステバンと共にモロッコの山岳地帯から砂漠の奥地へと車を走らせる。やがて彼らは、野外レイブ会場にたどり着くが、そこには娘の姿はなかった。父子はレイブの参加者グループの後を追い、娘が向かったと思われる次のレイブ会場を目指すが…。


 圧倒的な景観を背景に、予測不可能で奇抜なストーリーとダンスミュージックを融合させたスペイン産の異色ロードムービー。タイトルはアラビア語で「道」を意味する。広大な荒野が舞台なのに解放感はなく、妙な閉塞感を抱かされる。自分でもなぜそう感じたのかが不思議だったのだが、前半の新種のロードムービーというイメージがくつがえされる、後半の「そうきたか!」という驚きの展開を見て合点がいった。ネタバレ厳禁なので詳しくは書けないが、予備知識なしで映画館の大画面と大音響の中で見るべき映画だと感じた。


「Michael/マイケル」(12日公開)★★★


“キング・オブ・ポップ”の半生を描く


 圧倒的な歌唱力と革新的なダンスパフォーマンスで時代や国境を越えて今も愛され続ける“キング・オブ・ポップ”マイケル・ジャクソンの半生を描いた伝記映画。監督はアントワン・フークア。ジャクソン5の時代から「バッド」までの、マイケルの旬の時代が描かれる。幼少期のマイケルを演じたジュリアーノ・クルー・バルディ、そしてマイケルのおいでもあるジャファー・ジャクソンが、マイケルになりきって見事な歌とダンスを披露した点に拍手を送りたい。


 マイケルの闇の部分はほとんど描かれなかったが、この映画の本意は、あくまでも天才ミュージシャン、パフォーマーとしてのマイケルを描くことにあったのだろうし、1本の映画の中でその人物の全てが描けるはずもないのだから、これはこれでいいのかもしれない。また、ミュージックビデオの申し子としてのマイケルという意味でも、「ビリー・ジーン」や「スリラー」製作の舞台裏が垣間見えて興味深いものがあった。


「メモリィズ」(12日公開)★★★


人はなぜ写真を撮るのか


 東京で妻子と共に暮らす雄太(柄本佑)は、足を骨折した義父の誠(イッセー尾形)が回復するまで身の回りの世話をするため、九州の田舎町へやって来る。雄太は義父が営む写真館の仕事を手伝いながら、妻と娘に向けて、スマホで撮った映像を送ることにする。


 スマホの普及で簡単に写真を撮ることが日常化しているが、この映画の主人公の雄太も、構えることなく人物や風景をスマホに収める。片や、昔ながらの写真館を経営する誠は業務用のカメラできちんと撮影をする。となると、カメラとスマホは対照的なもののようにも思えるが、どちらも何かを記録したり、記憶するという点では同じだ。この映画は、写真を撮るという行為を新旧の機材を使って対比的に見せることで、現在と過去を結びつけ、家族の姿や風景が変化していく切なさを感じさせる。人はなぜ写真を撮るのか。そんなことを考えさせられながら、この一見冷めているようで実は温かい静かな映画を見た。


「君は映画」(19日公開)★★★


斬新な仕掛けで描く青春コメディー


 下北沢の劇作家・マドカ(伊藤万理華)と三軒茶屋のバンドマン・カズマ(井之脇海)はそれぞれ別々に映画を見に行くが、互いの出来事が映画としてスクリーンに映し出されるという、ありえない状況が生じる。そんな中、映画館の両隣の店で問題が発生。マドカとカズマはこの状況を利用しながら問題の解決に挑むが、互いの映画は影響し合い、事態は予想外の方向へと展開していく。


 「サマータイムマシン・ブルース」「リバー、流れないでよ」「リライト」など、時間をネタにした群像劇映画の脚本を手がけてきた劇団「ヨーロッパ企画」代表の上田誠が、長編映画初監督を務め、斬新な仕掛けで描いた青春コメディー。この映画は、パラレルワールドや多重構造的な世界を描いているが、時間のねじれや不思議さを扱っている点では、これまで上田監督が脚本を書いた映画と同一線上にある。よくもまあ次々とこうした面白いアイデアが浮かぶものだと感心させられた。


「黒牢城」(19日公開)★★★


戦国系心理ミステリー


 戦国大名・荒木村重(本木雅弘)は主君・織田信長を相手に謀反を企てるが、城は織田軍に囲まれ孤立無援状態に陥る。そんな中、城内で次々と怪事件が起きる。村重は幽閉した天才軍師・黒田官兵衛(菅田将暉)の力を借りて謎の解決に挑む。


 米澤穂信の同名小説を映画化した戦国系心理ミステリー。黒沢清監督が自身初の時代劇に挑んだ。最近、これまで時代劇を撮らなかった監督たちがこぞって時代劇を撮る傾向が見られる。彼らにその理由を聞くと、時代劇には、発想の自由さと無限の可能性があるからだと口をそろえる。この映画もそうした流れの中から生まれたと言ってもいいだろう。謎解きの〝お題〟を村重が牢内に持ち込み、幽閉した官兵衛がその謎を解くという設定が斬新であり、よくこんなことを考えたなあと思わせる意外性が魅力だ。菅田は、大河ドラマ「豊臣兄弟!」では竹中半兵衛を演じているので、何やらややこしいが、本木との演技合戦はなかなかの見ものだ。(映画ライター 田中雄二)

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