――最終的には「仲間」になり成長が見られましたが、主人公の夫のキャラクターは読んでいてなかなかイライラしました(笑)。
かねもとさん「これは世間一般的に愚痴られている『なにもしない夫』をイメージしています。私の夫はこの夫よりは家事育児に参加していますよ(笑)!
ただその『なにもしない夫』も、子どもの頃に“母が家事育児・父が仕事”という家庭、社会、価値観のなかで育った場合に、自ら『なぜ父親が家事育児をするのか』という問題には気づきづらいのではないでしょうか。
私がもし男性(父親)の立場だったら、妻側からの問題提起なしに『これはおかしい』とは思わなかっただろうなと、正直感じます。言われたところで、そういう常識で生きてきて、今自分が楽をできていて、有利な立場から苦労する立場へ自ら歩み寄ろうとするだろうか、と……そういった自分のなかの正直なずるい部分が産み出したのが、あの『なにもしない夫』であったように思います」
――ご自身で、描いていて楽しかったのはどういった部分ですか?
かねもとさん「全部楽しかったです! お話を考えるのも、社会問題をどのように絡めていくのかも、この作品に関わる全ての作業を楽しくすることができました。
全体的にギャグなので、シリアスなシーンは特に描いていて楽しかったです。『離婚したほうが……』のシーンと、最後の魔王との戦いは、このお話を思いついた時から頭にあったので、ようやく描けたときは嬉しかったです」
子どもたちが新たな価値観を運んできてくれた
――あとがきにとても感動しました。「お母さんになったことであきらめた夢が、お母さんになったことで叶っている」など、印象的な言葉がたくさんあります。
待機児童問題など、漫画にも描かれている育児の大変な面ばかり取沙汰されがちではありますが、「お母さん」になってよかったな、子どもを産んでよかったなと思うのはどういったところでしょうか。
かねもとさん「あとがきについてはたくさんの反響をいただき、本当に光栄です。
子どもを産んでよかったことというか、驚くことはたくさんありました。自分自身がこんなに子どもを愛しいと思える人間であったことは最大の驚きです。
それに、子どものこれからの未来を考えたときに、今の社会を疑問に思ったり、価値観などについて色々と考えるようになりました。それは、子どもを産まなければ一生疑問に思わなかったかもしれないことだらけです。
子どもたちは私に新たな価値観を運んできてくれました。そうでなければこの作品は生まれませんでしたし、本を出すという一度はあきらめた夢が叶うことはありませんでした。
母親になる前よりも、くよくよ悩んだり落ち込むことも多いのですが、私は今の自分の考え方が人生のなかでいちばん好きです。それは、子どもたちのおかげだと思っています」
――現在もTwitterで漫画をUPされていますが、今後の漫画活動について考えていることをお聞かせください。また、「伝説のお母さん」の続編だったり、その後のちょっとしたエピソードなどは今後期待していてもいいんでしょうか?
かねもとさん「ありがとうございます! 実はもっと書きたいものがあったんですが……神官と拳闘士が合コンに行くとか、シーフの夫との話とか、後輩魔法使いの結婚に対する意識とか、夫と魔法使いの馴れ初めとか、もちろんRPGの世界での子育てはどうなるのか?という、保活だけではないギャグも。
結婚する人もしない人も、しても家族の形は様々で、いろんな女性の生き方や、多様な価値観や家庭の形を描けたらなと思っていました。そういう家庭のあり方や生き方については、専門家の意見や、もっとわかりやすくまとめている本などがたくさんあります。
私にはそういう力はありませんが、マンガという形で何かを伝えることができるなら、機会があればぜひまた挑戦したいです」
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『伝説のお母さん』は、育児中なら共感できるシーンの連続なのですが、登場しているそれぞれのキャラクターも魅力的で、つい続編&番外編にも期待してしまいます……!
ギャグマンガなので、ちょっとした息抜きにも最適。ぜひ一度、手に取ってみてくださいね。
©Kanemoto/KADOKAWA