「スウィートなソウルはありますか!」 奇妙礼太郎トラベルスイング楽団

奇妙礼太郎TSG photos by SUNAO HONDA
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 ピアノで愛を語らないかい!?男も女もバカになる!愛情をたっぷり感じる音色と、躍動的な音色に男も女も皆楽しそうにステップを踏む。次に訪れたO-NESTのフロアは、奇妙礼太郎トラベルスイング楽団のオープニングナンバー『タンバリア』の歌詞そのまんまな雰囲気だ。関西を拠点に活動する、ボーカル・ギター・ベース・ドラム・パーカッションにホーン隊も擁し、ディズニーの名曲を気鋭ロック勢がカバーしたアルバム『Disney Rocks!』に『星に願いを』で参加するなど各方面から注目を浴びている大所帯バンドも、『YATSUI FESTIVAL』に花を添えにやって来た。「スウィートなソウルはありますか!」。『スウィートソウルミュージック』は、イントロのギターと礼太郎の高らかなフェイクから、めちゃめちゃスウィートな響きが胸に染みる。その、ちょっとクセのあるブルージーな歌声から伝わってくる何ともいえないセンチメンタリズムのようなものは、例えば憂歌団を聴いたときのときのような感覚を個人的には思い出した。パワフルで、どこか哀しげでもあり、とっても温かい。人の心をとらえる情感を、この人達の歌声と音色は間違いなく持っている。

奇妙礼太郎TSG   photos by SUNAO HONDA拡大画像表示

どこまでも続くメロディ、リズム──。もう本当に『スイートソウルミュージック』の歌詞のとおり、この心地よきメロディとリズムが永遠になり続けて欲しいなんて思ってしまう。そして、越路吹雪の名唱で知られる『サン・トワ・マミー』はラバーズ・ロック風の心地よいリズムで酔わせ、松田聖子の『スウィート・メモリーズ』は切ないバラードで胸をギューッと締め付け、スタンダードの名曲『オー・シャンゼリゼ』ではフロアを手拍子で埋め、etc……。彼らのライブを生で観るのは初めてだった人もいたに違いないが、今まで知らなかった人とも音楽の力で繋がることができるのは、まさに冒頭でも書いたフェスならではの最高の瞬間だ。それだけの魅力が、奇妙礼太郎スイングトラベル楽団のこの日のライブには確かにあった。

一方他の会場では…大注目のきゃりーぱみゅぱみゅ と ルーキー2組

きゃりーぱみゅぱみゅ photos by Yuji Honda
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さて、またまたウレぴあ編集部による別ステージレポをお届け。次はEASTにて、きゃりーぱみゅぱみゅの登場です。快進撃を続ける最新形ポップカルチャーアイコンをひと目見ようと、大量のお客さんでフロアはパンパン。そんな中4人のダンサーを従えついに登場したきゃりーぱみゅぱみゅのステージは、序盤こそ本人/お客さんともお互い慣れないシチュエーションということもあってか、双方に若干の硬さがあった感も。しかし、徹頭徹尾ポップながらどこか毒々しくドラッギーな中毒性を持ったサウンドとダンスで、ジワジワときゃりーワールドに引き込まれていきます。

きゃりーぱみゅぱみゅ photos by Yuji Honda
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特に異様なほどアッパーなインストの中で「♪あんあんああんああん、きゃりーぱみゅぱみゅ」というコーラスがひたすら連呼される『きゃりーANAN』では、脳内がだんだんと“きゃりーぱみゅぱみゅ”という概念に侵食されていくような、ヤバイ快感が発生してしまいました。ラストの『つけまつける』の前にはお客さんに振り付けを指導し、「やらないと地獄に落ちますので気をつけてくださいね?」と宣告(笑)。前にいたバンド系の若い男子たちがかわいい振り付けを一所懸命やっていたのが印象的でした。4曲と短い時間でしたが、自分を含む初見のお客さんにも、強烈な印象を残したのではないでしょうか。

 
ここからはCrestにて、若手バンドのライブをふた組続けて体感してきました。まずはWHITE ASH。4ピースのいたってシンプルな編成で、メンバーもいかにも文系といった素朴なルックスなのですが、とにかくボーカル・のび太(これまたすごい名前です)の歌声に早々にノックアウトされました。他の人を引き合いに出すのは無粋なので控えますが、それこそ名だたるロック・ボーカリストの系譜に名を連ねるに充分な可能性を持った、少年の無邪気さと色気を兼ね備えた、とにかくいい声なのです。で、さらに驚いたのが、他のメンバーもみんな歌がうまいこと!?全員がここまで歌えるバンドってなかなかいないと思うし、聴いていて“発語の快感”というか、メロと演奏に乗っかる言葉のはまり具合がとにかく気持ちいいのは、全員が歌うということに自覚的だからこそ成せるものではないかと感じました。そんなボーカルを支える重厚かつタイトな演奏も見事なもの。この日も披露されたニューシングル『Kiddle』の売れ行きが好調、ライブもソールドアウトを記録するという現状を受けて「勢いって怖いよねえ(笑)」と語る彼らですが、その勢いも納得の、さまざまな可能性を感じさせるステージでした。
そのままCrestに残り、沖縄出身の女性4人組、FLiPのライブを待ちます。楽曲が人気アニメ『銀魂』のオープニング・テーマに起用されているという前情報から、親しみやすいガールズロックなのかなと思っていたら、ド頭からラウドな爆音&シャウトの連打!しかも単に音がデカいというより、一音一音の体積がデカいというか、音に込められたエモーションの量がちょっとケタ違いなのです。今どき珍しいほどに正攻法な、ど真ん中のロックが次々と繰り出される彼女たちのライブには、「自分たちにはこれしかできない」といういい意味での不器用さがあって、そこがとても痛快でした。「……言葉はいらないね。この空間をみんなと一緒に楽しみたいと思います!」というサチコのMCどおり、4人から放たれる音がすべてを物語る、不純物ゼロのパフォーマンス。つまりFLiPは極めてまっとうなロックバンドだったのでした。このピュアな衝動を持ち続けたまま、どこまでも大きくなっていってほしいです。ベテラン勢に加え、彼らのようなイキのいいニューカマーも多数出演し、フェスティバルをおおいに盛り上げてくれました。