冬将軍:出てた!『LA VIE EN ROSE』が限定盤で売ってなくて、最初レンタルだったので、それで買い直した(笑)。

藤谷:それでその再発に飛びついて(笑)。『LA VIE EN ROSE』、『BASILISK』、野音のライブ盤…。そんな風に一気に全部聴いたのでシーンの流れみたいなのはわからないんですよ。それからVHSを中古で集めたり。

冬将軍:っていうかリアルタイムでも、メジャーデビューして10ヶ月くらいしかいなかったし、「なんだかよくわからなかった」んですよ。露出も少なかったし、今以上に情報を取りに行かなかったら何も入ってこない時代だったし。

藤谷:だからこそ後追い勢からしたら「神秘的でカッコイイ」って感じなんです。

冬将軍:今の感覚で言うとありえないですよね。メジャーデビュー10ヶ月で解散って。

藤谷:でも昔って情報の賞味期限みたいなモノが長かったじゃないですか。今だと一晩でツイッターで拡散されて終わっちゃうような話でも雑誌の読者投稿欄で半年くらい議論してたり。そういう意味で語りぐさになってる部分もあるんじゃ?
情報が少なかったからこそっていうのはあると思うんですよ。

――神格化されてたんですか?

藤谷:というか復活するまでD'ERLANGERに言及すること自体がちょっとタブーっぽかったというか。現在のバンドをやってるのに、D'ERLANGERの話をされるのはそりゃヤですよね。

冬将軍:神格化、伝説化された節はありますよ。それこそ、メジャー期間があっという間だったし、セールス的にバカ売れしたわけでもないから、メインストリームには出てこなかったじゃないですか。活動歴を見れば、その後のDIE IN CRIESやCRAZEのほうが全然長いわけで、そこからのファンも多いし。

あとは、INORANのようにリスペクトするバンドマンが出てきたり、「XのHIDEがkyoやTETSUとバンドやってた」みたいな横の繋がりだったりと、いろんな逸話も有名になって、各方面からのファンも増えた。音楽的にも前衛的だったから、後からの評価のほうが高い気もします。アルバムだって2枚しかないし、ミステリアスなカリスマバンドとして伝説化していった。

藤谷:何よりも後続のミュージシャンにフォロワーが多いんですよね。とくにCIPHERの。CIPHERはギター持ってるだけでカッコイイじゃないですか!最近あんまりいないギターヒーロー的な存在というか。それにプレイスタイルに影響を受けたミュージシャンも多いと思うんですよ。

冬将軍:テクニックよりも“魅せる”ギタリスト。速弾きよりも、モニターに左足をかけて掻きむしるシルエットに憧れるわけですよ。細かいけど、大きくギターをかき鳴らしたあと、普通の人は右手が前にいくんだけど、CIPHERは後ろにいくんですよ。あのスタイルに感化されたギタリストはDIR EN GREYのDIEをはじめ、大勢居ますから。JUDY AND MARYのTAKUYAもジャパメタ時代からのフォロワーですしね。あの有名なペイントギターはCIPHERモデルの色違いでしたし。