D’ERLANGER

藤谷:cali≠gariの青さんもCIPHERモデルですよね。

冬将軍:あれ、市販されたモデルのプロトタイプというレアなヤツ。MUCCのミヤも最初はCIPHERモデル使ってた。CIPHERのトレードマークだった蛇革を、INORANが本人の了承を経て自分のモデルに使用したり、脈々と受け継がれる“瀧川魂”。

とはいえ、本人の今使ってるモデル全部に共通している尖ったヘッドも、元はJIMMY(44 MAGNUM 広瀬さとし)モデルのデザインで、ちゃんと使用許諾取ったらしい。CIPHERのピックってロータリーエンジン風に穴が開いてるんだけど、DIEピックも同じ穴開いてますからね。あの穴の開け方、特許取ってるという話だから、そこまで真似するかって(笑)。でもそういう継承ってなんかいいよねぇ。

そうそう、音の話をすると、今のD’ERLANGERは“半音下げ”チューニングなんですけど、、当時は“四分の一音下げ”で。最初、これが全然わかんなくてさ!

藤谷:へえ。

冬将軍:ギターをコピーしても全然音が取れないんですよ。バンドスコアには、半音下げと書いてあるんだけど、その通りにしても微妙に音が合わなくて。「テープの回転数をわざと上げてるんじゃないか?」とか、いろんな説や憶測があったの。ある時、「あれ?これ半音まで下げてないんじゃないか?」って気が付いて。チューナーで四分の一だけ下げてみたら、ドンピシャ!半音下げっていうのはハードロックやメタルの世界ではよくあるんだけど、四分の一音下げってなんだよ、これはひねくれてるぞと(苦笑)。

――他のメンバーに関してはどうですか?

藤谷:TETSU、cali≠gariの新しいアルバム『12』でもドラム叩いてますよね。良いですよね。

冬将軍:TETSUのドラムって一発でわかっちゃう。

藤谷:弟子筋のMERRYのネロもなんですけど、なんかわかるじゃないですか。あれはなんでなんですか?

冬将軍:音がデカイ(笑)。ドラムが異様に大きい音源もあるじゃないですか。まぁ、そんな単純なところじゃなくて生音もデカイ。パワフルとはちょっと違うんですよね、鳴らし方を知ってるというか。楽器やらない人でも、あのドラミングみたら「凄い」と思うでしょ。

チューニングやセッティングもあるけど、手癖のフレーズ、ハイタムの回し方とかアタックの強い叩き方だったり。機械的にリズムを刻むというよりも、野性的でバンドアンサンブルに揺さぶりをかけてくるんですよね。

藤谷:クリックを使っていないというのも有名な話で。

冬将軍:ライブ中にわざとテンポ上げてみたりしてね(笑)。走っちゃうんじゃなくて、わざと捲し立ててるから、すごいニヤニヤしながら叩いてるの。

藤谷:そういうところありますよね(笑)。

冬将軍:ネロもそんな感じだよね、やんちゃというか。“瀧川魂”は硬派ですけど、“菊地魂”は派手で自己主張が強い。で、喋りは三枚目(笑)。

藤谷:そういえばkyoってD'ERLANGERの時は「VOICE」っていうパート表記だったんですよね。「Vocal」じゃなくて。

冬将軍:DIE IN CRIESの時は「Vox」だったっけ。

――なんですかそれは?

藤谷:パート表記に拘りがありましてね…! 

冬将軍:「そういうこと」をやり始めた元祖なんじゃないの?

藤谷:あっ、そういえば…。今ではヴィジュアル系の伝統芸になってるパート表記が普通じゃないってD’ERLANGERで初めて見たかも…。元祖かどうかわかんないですけど…。
それで話戻るんですけど「VOICE」っていう通り、結構淡々とした歌い方なんですよね。
それに、明確なフォロワーってあんまりいないですよね。

冬将軍:ロックボーカルにしては、滑舌いいんですよね。ハードロック畑でキィが高いし、声質に特徴あるから真似できないというか。でも、あの独特のボーカルが最初はちょっと苦手だったなぁ。当時は正直上手いとは言えなかったし…(苦笑)。

藤谷:だからこそ淡々と歌ってたのはあると思うんですよ。

冬将軍:でも、ボーカリスト・フロントマンのオーラはハンパなかった。“鈴カステラ”なんて言われましたけど、前は金髪、後ろは赤髪のデヴィット・シルヴィアンヘアーとか、とりあえずやってみたよね。理科室から拝借したオキシドールで(笑)。太いヘアバンドがなかなか売ってなくてさー。

藤谷:SEELAは寡黙な印象がありますよね。

冬将軍:なんだかんだいって、D’ERLANGERはSEELAのベースが鍵だと思うんですよ。ベースラインがオドロオドロしいっていうか。ピック弾きのベーシストってガシガシ弾く人が多いんだけど、この人は大蛇が地面を這いずり回ってるようなベース(笑)。
胸にくるんですよ、低音が。よく低音はお腹にくるっていうけど、もっと低くなると体感的にもうちょっと上、胸にくるんです。耳では聴こえない周波数、振動が。ギターとドラムが耳に残るバンドだから解りにくいんだけど、知らない間に我々の身体はSEELAさんのベースに蝕まれているわけです(笑)。

藤谷:わかる気がします。

冬将軍:“男性の手”が好きな女性って多いでしょ?SEELAの手が好きという女性ファンも多いはず。1弦から4弦、ローポジションからハイポジションまで満遍なく使うプレイヤーだし、ネック上を滑らかに舞う左手はセクシーですよ。ネックを顔に近づけるように構えるし、左手首がグイって前に出るんですよね。だから余計によく見える。“手フェチ”の人は、SEELAのベースを操る手をおすすめしておきます。