「日本人なら知っておきたい日本文学」/蛇蔵・海野凪子著/幻冬者

基本的に漫画で、“人物で読む古典”というサブタイトルです。
《安倍晴明》は、「平安の闇を操る陰陽師の安倍晴明がカッコイイ!しかも高給取りの公務員で年収は二億から四億円!?」と描かれています。

国家機関、陰陽寮に勤める公務員の安倍晴明は、普段は天体観測をしたり、時報を出したり、カレンダーを作って吉日を決めたりします。
陰陽道は当時最先端の科学であり、怪異が起こると陰陽師に対処を聞くのが普通でした。天皇の相談に乗るような公務員陰陽師は超エリートで、中でも出世した晴明の推定年収は2~4億円だったそうです。

鎌倉時代末期に生きた徒然草の作者《吉田兼好》はシンプルに賢く生きるノウハウ本である「徒然草」を出版。その中で兼好は「最近凝った名前多いよね…昔はもっと素直に名付けていたと思うのだけれど。人の名前に見慣れない漢字を使うことがいいとは僕は思わないなあ」と残しています。まるで最近の話のようですが、700年前の発言なのです。

そんな兼好は、若い頃サラリーマンでした。30歳で出家を決意し、歌をして質素に暮らしていくといい、周囲は心配しましたが、のちに歴史に名を残すほど歌で成功します。今の紅白出場くらいの名誉である勅撰集にも詠んだ歌が選ばれたのでした。

いずれの歴女本も、歴史上の人物が興味深く、また親しみやすく描かれています。時代の普遍を読み解き、何千年前のひとも同じことで悩んでいたのかと思うと、いまあなたが悩んでいることに対しても、少し気が軽くなるかもしれませんよね。

ノンフィクション読み物としても面白い歴史を、学生時代の暗記科目で終わらせるのはもったいないと思わせてくれる、歴女本たちです。

月の労働時間350時間、音楽プロモーターでワーカホリックだった上にライターを兼業する無謀な87年生まれ。毎日アーティストと飲んだくれ、明け方に帰宅するという生活を5年間続ける。 現在はフリーランスのライター。女性の社会問題・仕事女子の生態・エンタメに従事。