NHKの大河ドラマ「花燃ゆ」で、薩摩藩士のために隠密活動をするなど、“勤王芸者”と呼ばれた京都の芸妓(げいぎ)、辰路を演じている鈴木杏。辰路は、妻の文(井上真央)を萩に残し京都に滞在することが多かった久坂玄瑞(東出昌大)と深い仲になる。舞台から映画までさまざまなフィールドで活躍する鈴木が辰路について語る。
-辰路を演じてみて、どんな印象でしたか。
芸妓さんには一人一人にドラマがあると思いました。ただ、撮影が月に何日かしかないので、辰路に戻るのに時間がかります(笑)。でも京言葉をしゃべったり、結髪さんに髪を結ってもらったりすることで辰路に引き戻されていくような感覚があります。
-芸妓を演じるに当たって何か参考にしたことはありますか。
京都で芸妓をしている友達と何度か食事をしました。彼女は、何かふわっとして男性にしなだれかかるようなイメージではなく、どっしりとしているんです。その方が逆に迫力があるということを感じました。彼女を見て、芸妓さんには男性が甘えたいと思う部分があるのかなと思ったので、とても勉強になりました。どっしり感をキーポイントに、その中で繊細さとか揺らぎを表現したいです。
-勤王芸者の中にはスパイのようなことをする人もいたようですが、どう感じました。
女性としての華やかさは大きな武器だし、頭がクレバーでないと芸妓さんはできないと思うので、ある意味スパイをしたり探ったりするような役割はぴったりだったと思います。間合いの取り方などもお座敷でとことん鍛えられているし、頼もしい存在だったのだなと。
-久坂役の東出さんはいかがですか。
好青年ってこういう人のことを言うんだと思いました。とても優しいし気配りもすばらしい。真摯(しんし)に役に向き合っている。ウイークポイントを見付けたいんですけど、見付ける前に撮影が終わってしまいそうで(笑)。
-東出さんが演じる久坂玄瑞の印象は?
真っすぐで情熱的だからこそ空回りしてしまうような人。絶対に逃げ道を作らないんです。息を抜いたりもしなさそうなので、大変そうです(笑)。
-辰路はそんな久坂を支えたくなったのでしょうね。
多分そうだと思います。ぶつかってくじけても、またはい上がっていこうとする。そんな彼を放ってはおけなかったのではないでしょうか。
-友達の芸妓さんからは何か言われましたか。
アドバイスみたいなことはありませんでしたけど、「私が白塗りしてあげたかったわ」って残念がっていました(笑)。
-文役の井上真央さんは同世代ですし、子役から活躍してきたという共通点もあります。
文さんとは久坂を取り合う仲というよりも、辰路には嫉妬心はなく、むしろ文さんに興味を持っていると思います。どういう人なんだろうと思っている状態なので、ドキドキしながら対面シーンを待っています。