アニメ『響け!ユーフォニアム』をアンブシュアが引き締まる思いで見ている。「吹奏楽あるある」を節々に挟みながら、紆余曲折に展開される青春ドラマは経験者の心をくすぐり、時にヒヤヒヤさせられる。京都アニメーションの制作ということで、『けいおん!』に続くゆるふわ楽器女子アニメかと思ってみれば、意外とギスギスしてるじゃないか。そうなんだよ、これなんだよ、吹奏楽部というものは。

華やかな演奏会やマーチングとは裏腹に、過酷な体力トレーニングや先輩・後輩の厳しい上下関係など、「体育会系文化部」といわれることの多い吹奏楽部。だが、 演奏技術はいわずもがな、感性やセンスを重んじられるのが音楽。

スポーツのように記録や点数を競い合うといった明確な勝ち負けはなく、内情は確執と嫉妬のせめぎ合いだったりもする。むしゃくしゃしたら「みんなで汗を流そう」なんていう運動部のような清々しさはないのだ。

穏やかな日々など訪れない苦悩と葛藤の毎日である。練習もさることながら、人間関係、派閥闘争…、担当楽器によって人格が形成されていくのか、 金管vs木管の衝突、終着点の見えないパートリーダー会議など、各パートによる特性・人間性が色濃く出てしまう。ポップスやジャズでもリードやソロで活躍するサックスの人たちには、いつも後打ち担当のホルンの気持ちなんて解らないだろうな…、みたいな。(筆者はホルンだった)

「吹部」? 「ブラバン」?

昔から吹奏楽部の呼称といえば「ブラバン」であるが、 近年は「吹部(すいぶ)」と略すことが増えている。「ブラバン=ブラス・バンド(Brass Band)」は本来、金管楽器を主体とした英国式バンド編成の呼称であるため、木管楽器を含めた一般的な吹奏楽部の編成を指すのであれば、「ウインド・オーケストラ(Wind Orchestra)」と呼ぶほうが正しい。部外者が「ブラバンは〜」というと、それを持ち出して喰ってかかる部員がいたりしたものだ。そうした誤解を回避するために生まれた略称だろう。

非経験者の方々、 作中で当たり前のように使用されているからといって、自分の周りの吹奏楽出身者(現役含む)に対して「吹部だったの?」と訊くのは危険だ。全国区の言葉ではないし、嫌っている人も多いのである(特に関東、北日本)。もっとも、有名校を「○○中ブラス、□□高ブラス」と自他ともに呼ぶ文化は健在であり、昔ながらの「ブラバン」のほうがしっくりくる場合もある。

英国式ブラスバンドの代表格、グライムソープ・コリアリー・バンド(Grimethorpe Colliery Band)。英国式バンドはオーケストラスタイルの“扇型”ではなく、“U型”の配列が特徴的。