厳しい部の掟
吹奏楽部員は常に品行方正で全校生徒の模範でなければならない。学業の成績が芳しくなければ、練習に参加することは出来ず、生活風紀を乱すことも許されない。女子は膝下までのスカート丈 、肩に掛かる髪の長さになれば、黒・紺・茶のヘアゴムで1本に束ねる。男子は後頭部の地肌を手で覆うようにして、指が隠れたら切らなければならない。
校内はもちろん、街中でも吹奏楽部員とわかるほどに徹底されたものである。他にはコンビニなどでの買い食い禁止など、細かい部則をあげればキリがない。
もし、風紀を乱す部員がいれば、個人の問題ではなく、連帯責任になる。当人の担当パート全員、もしくは部員全員に責任を課せられる。たとえ演奏会などの本番直前であっても、すべての練習を停止して、部員全員で校内中を清掃したこともある。
部内恋愛禁止もあった。クラスメイトより、家族よりも長い時間を共にする部員同士、10代の多感な時期には酷な部則。練習中はお互い必要以上の会話はせず、週一で練習後に学校より離れた隣街の公園で逢引するという『ロメオとジュリエット』(吹奏楽では、チャイコフスキーよりプロコフィエフ)さながらの禁断の恋なんてことも。
あくまで士気を重んじた規則であるため、大人しくしていれば黙認されたりもするのだが、思わぬことで問題になってしまうのも吹奏楽部ならでは。査問会さながら、200名の部員の前で謝罪、なんてことも。 …はい、それ、わたしです。誤解のないように言っておくが恋愛を否定されたわけではなく、けじめの問題。今となっては、それも甘酸っぱい青春の笑い話である。
吹奏楽部で学んだこと
吹奏楽部の厳しさは色々な意見があるとは思うが、大勢の音をひとつにすることは容易なことではない。少しでも気持ちに迷いや乱れがあると、不思議なことにそれが必ず音に出てしまう。ひとりでもそうした部員がいれば、合奏に影響が出てしまうのだ。
数十人の心をひとつにする、同じ目標に向かっていくということは、それだけ大変なのである。当時はそれが解っているようで解ってなかったりもしたが、大人になって思い返してみれば、改めて身に染みることも多い。礼儀、組織、秩序、人間関係、自主性… 社会に出るために必要なことのほとんどを学んだと言っても過言ではない。たかが吹奏楽部、されど吹奏楽部。
音楽を通して人間的に成長する――。 あの頃過ごした時間は、思い出であると同時に、人生の教訓でもある。
ただの青春サクセスストーリーでは終わらせないリアルで描く『響け!ユーフォニアム』。アニメとしても充分に見応えがあるものだが、社会の縮図ともいうべき吹奏楽部の日々はたとえ経験者でなくとも、感じることも多いはずである。夏のコンクールに向かってこれからますます、複雑なドラマになっていくだろう。
そして、次の曲が始まるのです。