プリキュアでこれをやっちゃうんだ!
『ハピネスチャージプリキュア!』
日曜朝の"ニチアサ"看板作のひとつであり、女の子にとっての永遠のヒロインといえば、皆さんご存知のプリキュアです。そんなプリキュアの10周年を記念して制作されたメモリアル作品がこの『ハピネスチャージプリキュア!』。
本作は、10周年作らしく様々なチャレンジを盛り込んだ意欲作です。
例えば、従来のシリーズが持っていた既存のプリキュアのイメージに囚われない「世界中にプリキュアが存在しており、しかも自国の平和を守る様子がテレビ中継され、"プリキュア"が人々に認知されている」という斬新な設定や、メイン級のキャラクターが洗脳を受け敵として主人公たちの前に立ち塞がる(所謂"悪堕ち")というハードな展開などなど、新機軸の設定が数多く用いられた作品となりました。
そして、この『ハピネスチャージプリキュア!』において、最も挑戦的な試みが主要人物たちによる複雑な恋愛模様をストーリーの主軸にしたことです。
これまでのプリキュアシリーズでも、"恋愛"という要素がストーリーに登場することはありましたが、あくまでもそれは、微笑ましいほのかなロマンスであり、爽やかな恋愛感情として描写されていました。
しかし、そこに大きな楔を打ち込んだのが『ハピネスチャージプリキュア!』なのです。恋の三角関係や男女による過去の因縁、決して一筋縄ではいかない厄介な"恋愛"の形が劇中では描かれ、正義のプリキュアと悪の侵略者の間で"愛憎劇"が繰り広げられます。
『プリティーリズム・レインボーライブ』もそうなんですが、こういった女児向けアニメで昼メロ的なラブストーリーが繰り広げられる様はインパクト抜群! しかも、本作はあのプリキュアシリーズですからね。プリキュアでここまでインパクトのある物語を作ったスタッフさんの思い切った冒険心には本当に驚かされます。
"愛"という複雑な感情に振り回される、或いは、身近な人間を振り回してしまう女の娘たちの姿は、非常に怖い。愛に対して純粋過ぎるが故に、エゴイスティックになってしまい、結果、次々に悲劇を招いてしまう彼女たちの姿は、正義のヒロインであるプリキュアとは思えないほど不安定に見えてしまいます。
シリーズ10周年の記念作にして、意欲作であり異色作。それが『ハピネスチャージプリキュア!』。女性特有の怖さや面倒臭さを描いたシークエンスの数々や、愛に翻弄される登場人物たちの姿は、観ていてひたすらにもどかしいの一言なのですが、そんなところも本作のチャームポイントのひとつ!
子ども向けという偏見を取っ払って大人の女性にこそ観ていただきたい1本です。