本編終盤にさしかかった頃、暁(Vo)は“ダメ人間(アルルカンのファンの総称)”に向かって叫んだ。
「ダメ人間! 僕が僕たちを“ダメ人間”と呼んでいるのは、“そんなことないよ”なんて、他人に言ってもらうためじゃありません。悔しかったことを忘れないように、悔しかったことを何かに変えて、戦うためです。
欲しいものがあるのに、まだ手に入れてないものがある限り、俺たちは“ダメ人間”だ! 違うか? 戦おうぜ!」
どこまでも欲しがり、不相応でも欲しいものに手を伸ばす、この“渇望”と言うべき感情がこのバンドを駆動してきた。
結成から行き急ぐように駆け抜けていった感のあるアルルカンだが、今年2月に開催されたツアーファイナルでの暁の言葉を借りると、“これから続く未来のため”に、この1年はライブ本数も例年に比べて大幅に絞っていた。そして夏にリリースされた初のミニアルバム『BLESS』も、多彩な楽曲が散りばめられたものになっており、これまでとは違うアプローチを行おうとしていることが伺えた。
今年はアルルカンにとって地盤を固めるような1年だったように思う。“5番目”という名前が掲げられたツアー『Quint「」』は、今年のアルルカンの集大成と呼べるものになった。
まだ薄暗いステージに堕門(Dr)、祥平(B)、來堵(G)、奈緒(G)が静かに姿をあらわし、最後にゆっくりと暁が登場。恒例の「アルルカンです、よろしくおねがいします」という挨拶から、ミニアルバム『BLESS』と同じく『世界の端』でライブはスタートした。じわじわと迫りくるような低音が響く中、“さあ行こうか 果てしのない道なき道を歩いていく”と暁が歌い上げる。
続いて、やはり新譜に収録されている『黒犬』へ。お立ち台に立つ暁が「起きろよ!」とマイクを打ち付けた音を合図に、拳を高く突き上げる“ダメ人間”たち。フロアに負けじと、奈緒と來堵も演奏だけでなくパフォーマンスでも魅せつけてくれる。
スクリーンには大きくバンド名と骸骨が映し出され、曲調の変化と連動するかのように、色や形を変えていく。