『墓穴』、『影法師』とタイプの違う激しいナンバーを繰り出し、点滅する赤い照明とサイレンの鳴り響く中始まった『「私」と”理解”』では、暁がマイクをフロアに向けると、大きな声で”ダメ人間”たちが合唱する。波打つようなフロアにむかって暁がピエロのような笑い声をあげる。
一瞬の静寂ののち、暁が挨拶する。「よく来てくれました。真顔でもいいし、笑ってもいいし、泣いてもいいし、君のやり方で、君の選んでくれたこの場所で、吐き出して、吸い込んで帰って欲しいと思います」という言葉から、『カルマ』へ。独特の浮遊感をもった音がフロアに広がっていく。
「手を伸ばそう! 真っ直ぐに!」と力強く叫ぶ暁。『MAZE』では高速ビートを繰り出す堕門、ステージ前方に駆け出し、重心を低くし激しく頭を振る祥平。再び暁が何度も「真っ直ぐに!」と口にし、『好奇心、僕を生かす』へつなげる。曲の軽妙なリズムと同期するようにスクリーンの映像が有機的な模様を描いていく。
ディレイを効かせたベースから始まる『NEGA ABILITY』の曲間で暁がうずくまったかと思えば、「“君を愛して”なんて、どの口が言ってるのか、我ながら思うけど、そんなことはわかっている! そんなことが出来りゃもうとっくにやってるんだよ! それでも馬鹿なことを歌おうと思います」と、誰に呼びかけるでもなく、自分自身に呼びかけるように叫ぶ。
「自分になんか負けてたまるか!」
中盤に差し掛かると、背後のスクリーンが姿を消し、バックドロップが姿をあらわす。続いて『exist』を放ち、フロアからの歓声に「その声が僕たちを強くしてくれます」と始まったのは、アルルカンの代名詞である“切なさと激しさ”を最新系にアップデートしたような『Rem』。
『消えてしまいたい夜に』の前に暁がフロアに語りかける。
「ここが、大事なことを改めて思い出せる場所になったらいいと思います。それぞれにとって。ちょっとずつそれが強くなっているような気がして。許せなかったものすら、許せてしまうような場所になったらいいと思います。
僕が、出す言葉とか、皆の出す音、愛してくれる皆の熱とか、ちょっとでも不幸が薄まるような感じになったらいいなと思います」
暁はストレートな物言いを得意とするタイプではない。ゆっくり何かを思案するように、言葉を選びながら、彼らしい表現で、“ダメ人間”たちへ言葉を贈る。
「……何が言いたいかというと、君たちと一緒にいろんなものを見たいです。見限ってもらっても構わない。でも、もし、必要としてくれるなら、とことん付き合ってください、僕は君たちがいると“嬉しい”です」拍手で応える“ダメ人間”たち。
彗星のようにシーンに登場したが、彼らの5年間は本当に泥臭く、このライブ空間は数多の“ダメ人間”たちと時間をかけて作り上げたものだ。きっと、“ここ”にいる誰もが“消えてしまいたい”と思った夜があるのだろう。だからこそ“ここ”にきたのだろう。
自身の名前を冠した『暁』は1stアルバムに収録されたナンバーだが、ここ最近のライブではアウトロで「この夜を越えて」という一節が付け加えられている。高らかに宣言するかのように、その声を響かせる暁。
この変化は、きっと“成長”と呼んでいいものだろう。変わったのはもちろん暁だけではない。この日、何度も堕門のいるドラムの前に集合し、バンドの楽しさ、絆を確かめ合うような所作を繰り返していた楽器隊。この1年でアルルカンは本当に成長したと感じさせる光景を幾度となく目にすることができた。