「サブカル沼」と「ヴィジュアル系沼」、それぞれの立ち位置
大槻:チェキなんかはまだよくてさ。チェキの紙を「式神だ」っていって売ったりするかもしれない。
ぶう:ボクらは庭で拾ってきた石をいいケースに入れて、物販で1万円で売っています(笑)。
大槻:おっ、それはつげ義春の『ねじ式』に収録されている『無能の人』と同じだわ!
ぶう:もちろん、それで儲けようとは思っていないし、冗談なんですけど。面白がって買ってくれる人もいるじゃないですか。“あえて”みたいな感じで。そういうの、もっとやりたいんですけど、どこまでがギャグとして許されるのか、どこからが不謹慎だといわれるのか、わからない世の中じゃないですか。
大槻:オレも考えたんだよ。チェキに金粉を塗って「輝くチェキ」として1万円で売るとか。それをさらに“念”をいれて……。コースター代わりにすると水が美味しくなるみたいな(笑)。
カバーの話に戻るんだけど、筋肉少女帯の『踊る赤ちゃん人間』、あれは滑舌悪いと歌えないんだよ。あの曲を、外国の人、黒人さんだったかなあ。日本語でカバーしてる動画がYouTubeに上がっていたんだ。オレより全然ちゃんと歌ってるの(笑)。
ぶう:へえ〜! どうしてその曲だったんでしょうね。
大槻:アニメの主題歌だったから、そこから入っているんじゃないかな。
ぶう:この10年くらいの間に、アニメが入り口になった大槻チルドレンは増えましたね。
大槻:いるいる! 嬉しい。多くが「『絶望先生』から」っていう。若いアイドルにも言われるもん。「絶望先生観てました」って。
ぶう:大槻ケンヂと絶望少女達の『かくれんぼか鬼ごっこ』、名盤でしたね。
大槻:だから、えんそくがカバーしてくれたことで、そこから筋肉少女帯を好きになってくれる、それで初めて知る人が現れるかもしれない。
ぶう:もういるんですよ。ウチのお客さんで。そうやって共有されていくのは、本当にいいことですよね。
ちょうどボクの世代って、大槻ケンヂのことをミュージシャンとして見ていないエアポケット層なんですよ、いわば。5つ下の弟がいるんですけど、そのくらいになると、アニメから入って、大槻さんは「サブカルの中ですごい立ち位置の人」っていう認識なんですよ。
大槻:サブカル沼の!
ぶう:“サブカル沼の帝王”みたいな。
大槻:それはイヤだなあ〜〜!
ぶう:なんでイヤなんですか〜? ボクより上の世代になると、「ああ〜、筋肉少女帯、テレビに良く出ていた〜、知ってる」ってなるじゃないですか。ちょうどボクくらいの30代が、大槻さんがテレビもあまり出ていなくて、僕らの周りはいなくて、布教しまくってました。
大槻:ありがとう〜。30年以上やってるからさぁ、皆の筋肉少女帯像、大槻ケンヂ像、何で出会ったかっていうきっかけが、世代によって違うんだよね。
ぶう:ボクの場合は地元が高円寺なので、“地元に住んでいる有名人”だったんです。でも、周囲では名前を知っていても、CDを聴いている人は少なかった。
ボクは「すごくいい! オマエらミュージシャンとしての大槻ケンヂを知っているか!」と布教しまくっていたので、ボクらの下の世代の若い子たちは、アニメのパワーでメッチャ知ってるんですよね。逆にそっちと意気投合しちゃう。
大槻:えんそくも、いうても長いから「えんそくを観てバンドを始めました」っていう人達が来るよ!
ぶう:13年やってるんですけど、ぜんっぜんいないんですよ。全くリスペクトされていません。
大槻:いやいやこれからこれから。“えんそくチルドレン”が出てくるよ。
ぶう:だといいんですけどね。同年代のバンドマンは結構いるんですけど。「団長さん(NoGoD)ってすごいですね」みたいな話は聴いても「ぶうさんってすごいですね」っていう人は見たことがない……。
大槻:そんなことないよ。
ぶう:そうなってくるといいんですけど。そして、そうなった時に、ボクは“サブカル沼”の一員でいたいんですよ。
大槻:でもあれだよ、こないだ眉村ちあきちゃんっていうアイドルの子に、「早くサブカル沼から出なきゃダメだよ」って言っといたんだ。「ここは居心地がいいけれど、結局沼は沼だよ!」って。いい話でしょ?
ぶう:でも、ボクはヴィジュアル系の中で、サブカル沼寄り人間でいたいんです!
大槻:ヴィジュアル系沼はどうなの? あ、沼って言っちゃったけど(笑)。
ぶう:もはや、どこもかしこも“沼”ですよ! ホスト系みたいな沼もあるし、だいたいここ(前髪をいじる)が長い、キラキラした沼もあれば、なんか怒ってるようなシャウトをする人たちの沼もある。
大槻:ヴィジュアル系高齢化問題はどうなの?