えんそく・ぶう(撮影:市村岬)

ヴィジュアル系が直面する、「型」の崩壊、「文化」の崩壊

ぶう:それは大変ですね。ボクらの世代が人数的には一番多いんですけど、そこからきゅっと先細っている。20代で活躍している人が少ないと感じています。

大槻:そうか〜、20代でヴィジュアル系をやっているひとは少ないのか〜。

ぶう:BUMP OF CHICKEN以降、前髪で目を隠すタイプのバンドに行っちゃってる。あとはダンスやK-POPとかですね。

大槻:ヴィジュアル系そのものは、なくなりゃしないだろうけど……。

ぶう:歌舞伎的みたいになっていくのかもしれないですね。

大槻:そろそろ50代の人も出てくるだろうし。

ぶう:大変ですね。そのうち無形文化財みたいになっていくのかも。

大槻:そのうち、あと20年くらいしたら「ぶう師匠」って呼ばれたりするんだよ(笑)。「ぶう師匠、よろしくお願いします!」みたいな。

ぶう:ヴィジュアル系の“型”みたいなものを受け継いでいる人がいなくなって。「そんなお客さんに媚びてはいけない。“行けんのかてめえら!”じゃないとダメ!」みたいな。それも含めてヴィジュアル系じゃないですか。

大槻:まだお客さんのことを「てめえら」扱いなの?

ぶう:ボクもしてますよ! でも、若い子たちはやっぱり“型”が崩れている。ヴィジュアル系らしくないですね!

大槻:お客さんもディスられてなんぼみたいな。

ぶう:ボクはヴィジュアル系はプロレスだと認識してるけど、それが成立しにくいなと感じることはあります。煽りを怖がったり、怒ったり。「ごめんごめん、こっちも楽しませるつもりでやったんだけど…」みたいなことは最近はあります。型の崩壊、文化の崩壊ですよ。

大槻:文化の崩壊、いい言葉だなあ〜。最近、上の世代になると「皆さん」って言っちゃうんだよ。それぞれ人生を積んでいるから、「てめえら」って言っちゃうと申し訳ない。コンプライアンスが出来上がってくるのかな。

大槻ケンヂ/ぶう(撮影:市村岬)

ぶう:だから、最近ボクも考え直しまして、悪い言葉ばかり使うと皆が怖がってしまう。とはいえ、へりくだってスター性は下げたくない。それで、諸先輩のライブを見て学んだのが、「エブリバディ」です。あれは親切なんだか、強いなのか分からないじゃないですか。でもなんかスター性は維持される気がして。

大槻:「オーディエンス」っていうのもいいですよ。

ぶう:なんか品がありますね。「オーディエンスの皆さん」、使っていきます。英語はいいですね。そのへんが曖昧で。大槻さんも「エビバディ」は、ずっと言ってますよね。大槻さんは言ってると気づいたんです。エレカシを見ても言ってる。大槻さんも宮本さんも言ってるならそれが正しい。

大槻:言ってたねえ、そういえば。女性方は「てめえ」と言われたら、カチンと来る時があるみたいです。

ぶう:ボクも若い頃は「若いからヤンチャでやってる」みたいに見られていたのかもしれないけど、もう30代になると「おっさんが大きな声で“てめえら”という怖い」のではないかと。

大槻:そうそう。

ぶう:難しいですね。……何の話ですか?

――沼の話からここまできました。

大槻:えんそくが、カバーによって、ヴィジュアル系沼とサブカル沼を取り込んで、メジャーレイクに行ける可能性だってあるんだよね。

ぶう:湖に! それも狙ってます。まずはヴィジュアル系沼とサブカル沼のグレーゾーンにいきたいんです。

大槻:それは相当良くない場所だよ(笑)。