子どもたちを守るヒーローとなったガメラのキッズムービー路線
私は、ここが、ガメラとゴジラとの最大の違いだと思います。放射能や核の恐怖から生まれた怪獣、ゴジラは人類にとっての脅威として非常に恐ろしい存在として描かれています(ただし、一部のシリーズでは、コミカルな要素が出てきたり、人間を守る味方として描写されていますが)。
反面、ガメラには、どこか愛らしい、チャーミングな要素があるのです。それもあってか、『大怪獣ガメラ』のヒットを受けて製作された一連の昭和ガメラシリーズでは、次々に登場する敵怪獣を相手に、超自然や宇宙人の脅威から人類を守る"ヒーロー"として描かれることになります。
ガメラの激闘史における幕開けとなる、『ガメラ対○○○』シリーズの第一作、『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』こそ、秘境への冒険譚に人間ドラマを軸にした同時代の特撮映画らしい作品となっていますが、ガメラの永遠のライバルとなるギャオスの初登場作となる『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』以降は、徐々に子どもたちが親しみやすく、また、人間ドラマやシリアスなメッセージ性よりは怪獣同士のバトルシーンを重視したシンプルで明るい作風となっていきます。
ガメラ映画は、子どもたちへのサービスをふんだんに盛り込んだキッズムービー、ファミリームービーとなり、一貫して人類を守る正義のヒーローとして映画に登場することになるのです。
そんなガメラの前に立ち塞がる悪役の怪獣たちも実に個性豊かです。イカのような姿をした宇宙怪獣バイラス、刃物のような頭部を持ち、そこから手裏剣を発射する大悪獣ギロンなど、子どもたちに目線を合わせた分かりやすく、フリーキーな……誤解を恐れずにいえば"キッチュ"な怪獣のデザインも昭和特撮の味わい深さに満ちており、一つの魅力となっています。
そんな昭和ガメラも第七作目となる1971年製作の『ガメラ対深海怪獣ジグラ』を最後に大映の倒産を受けてシリーズが終了。シリーズのキッチュな側面を濃縮したような総集編的作品(何故か、女子プロレスラーのマッハ文朱主演)である『宇宙怪獣ガメラ』(1980年)制作後、ガメラは長い眠りに就くことになります。
シリアスさを増した平成版ガメラ『ガメラ 大怪獣空中決戦』
長いこと休眠していたガメラシリーズですが、1995年に生誕30周年記念作として平成版のガメラ第一作が製作されます。それが、『ガメラ 大怪獣空中決戦』!
監督には、SFやオカルト関連の映像を得意とする金子修介氏が登板。特撮シーンの指揮(特撮技術監督)には、アニメ関連の仕事にも定評のあった樋口真嗣氏を招いて本作は世に送り出されました。
『ガメラ 大怪獣空中決戦』は、昭和ガメラシリーズ第三作の『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』のリメイク版であり、肉食の凶悪な怪獣、ギャオスとガメラを対決を描いたものです。ただし、CGを駆使した特撮シーンや、自衛隊の協力を得ての怪獣との戦闘シーンなど、オリジナル版から格段にパワーアップを果たしています。
宿敵、ギャオスの圧倒的な凶暴性、そのギャオスの攻撃に傷つきながらも戦い続けるガメラの悲壮感溢れるヒロイックな美しさ、大迫力の空中戦と特撮シーン、そして、爆風スランプのエンディング曲……全てが完璧な素晴らしい映画です。
この『ガメラ 大怪獣空中決戦』が大ヒットを記録し、更には映画誌や批評家からも好評をもって迎え入れられたことで、後に続く『ガメラ2 レギオン襲来』(1996年)『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』(1999年)という<平成ガメラ三部作>が世に送り出されることになります。