「絵本の読み聞かせで心が育つ」
「脳が刺激される」
「語彙が増える」
そんなフレーズを聞いてしまうと「毎日、読み聞かせをちゃんとしないと」と焦ります。
一日最低5冊は読み聞かせする、と大きな課題を自分に課すお母さんもいます。
でも、やり方を間違ってしまったらせっかくの苦労も水の泡です。
そこで『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者の立石美津子が“やってはならないNGな読み聞かせについてお話ししたいと思います。
“昨日と同じ本を拒否”しない!
「絵本を読んであげるわよ」と声をかけ、ふと見ると、子どもが手にしているのは昨夜と同じ絵本。ちょっとうんざりしてしまいます。
だから「それは昨日も読んだから違うのにしなさい」と断りたくなりますよね。
大人は繰り返しが嫌いです。一度読んだ本を試験勉強で必要に迫られることなどない限りは再び読み返すことはありません。だから絵本も同じものを読みたくはないのです。
でも子どもは違います。「知っているからもう聞きたくない」のではなく「知っているから何度でも聞きたい」のです。どこで何が出てくるか知っていて“笑う準備”までしています。
“て・に・を・は”まで覚えていて少しでも間違えると「違う!」と怒って指摘してきます。
子どもが望んでいるのですから同じ本を読んであげましょう。
“面倒だから省略”しない!
子どもは繰り返しが大好きな生物です。だから、人気の絵本は繰り返しが多いです。
例えば「大きなカブ」。ぺージをめくってもめくっても登場する人や動物が変わるだけで文章はほぼ同じです。
めんどくさくなったママがこう省略しました。
「畑にカブがありました。みんなで力を合わせたら抜けました。最後のちっぽけなネズミの力でも役に立ちますね」と教訓をからめて要約して終了。
子どもは不満たらたらで「ちゃんと読んで!」と怒りました。
「桃太郎」でも、繰り返し同じフレーズが出てきます。だからついママは、こんなふうに省略したくなります。
「キジはさっきの犬や猿と同じことを言いました……」でも、子どもは「ちゃんと読んで!」と怒ります。
子どもは繰り返し同じ言葉を聞くことで言葉をマスターしていきます。それには反復が欠かせません。
読み終えた途端「もう、1回読んで」と言われたら、トコトン付き合ってあげましょう。
繰り返しにより子どもは絵本に使われている言葉を母国語として取り入れていきます。
例えば「猿蟹合戦」の文章で蟹が猿に向かって叫んだ言葉「猿さん、これも渋いよ。もっと甘い実を投げておくれよ」を読んでもらっている子は、柿を食べたとき「この柿は美味しくない」の単純な言葉ではなく「これは昨日の柿よりも渋いよ」言ったりします。
こんな言葉を話す子どもは絵本を繰り返し読んでもらっていた経験がある子どもなのです。