忘れられない、「オリーブオイルのジェラート」の美味しさ

ジェラートで思い出すのは、イタリア料理研究家の家で出会った一品である。

10年ほど前、ジェラート職人の茂垣綾介さんが、手作りのジェラートをイタリア料理研究家の家に手土産に持参したのだ。偶然居合わせおかげで、茂垣さんのジェラートをご相伴させてもらった。

フルーツのジェラートなら、これまでイタリアレストランで何度も味わってきた。ところが、茂垣さんの作品は、これまで経験してきたものとは別格だった。

イタリア料理研究家の家で、ナッツが入ったジェラートも賞味したはずだが、イタリア産オリーブオイルを用いたジェラートが一番印象に残っている。オリーブオイル特有の、舌にまとわりつく、濃厚な味わい。

こんなジェラートがあったのか。そう思いたくなるような、見事な作品だった。

オリーブオイルのジェラートが忘れられず、祐天寺へ向かった。茂垣さんが、祐天寺駅前にジェラート専門店「ジェラテリア アクオリーナ」を営んでいるのだ。

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  • (左から時計回り)「フレッシュミルク」、「プラム」、「ピスタッキオ」
  • 「チョコレート」(左)と「マンドルラート」
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営業は夜11時まで、ジェラートのレシピは300種類以上!

茂垣さんは、フランス料理やイタリア料理を修業後、2004年、23歳で渡伊。7年間イタリア各地で、イタリア料理の研さんを積んだ。

パルマ特産の生ハム「クラテッロ」を手作りするマッシモ・スピガローリの工房でも修業したことがある。マッシモは、『美味しんぼ』(81巻/イタリア料理対決!!)にも登場した、パルマの有名シェフのひとり。

イタリア料理やイタリアの伝統的な生ハム作りも習得し、帰国。リストランテを開業することもできたはずだが、ジェラート職人の道を選んだ。

ジェラートというと、映画『ローマの休日』に登場した有名なシーンを思い浮かべる。ペップバーン扮するアン王女が、スペイン広場で美味しそうになめていたのがジェラートである。

「もちろん、イタリア人は昼間もジェラートを好んで食べますが、夕涼みがてら、夜ジェラートショップにくり出す人が多いんです」

夕食後、家族でジェラートを食べに出かけたり、呑んだ〆にジェラートショップに立ち寄る人が多いのだそうだ。夜遅くまで開いているジェラートショップを、バール感覚で利用しているというのだ。

「うちもイタリアを見習い、夜11時まで営業しています」

『ローマの休日』はモノクロだっため、ペップバーンがどんなジェラートを食べていたのか、つまびらかではない。けれど、ヘップバーンが握っていたコーンには、ジェラートが単体で盛られていたように思える。

「単体で頼む人もいますが、イタリア人の多くが、数種類のフレーバーを注文します」

なぜ数種類のジェラートを頼むのか。

数種類の味を一度に頬張ると、単体ではけっして味わえない、複雑な味を口の中で創造できるからだそうだ。

アクオリーナのジェラート・レシピは300種類以上。常時その中の約20種類を提供している。

果物は農家から直接届く。果物には旬があり、その時々で異なるフレーバーを作る。

「作りたいジェラートがたくさんあり、食べてほしいジェラートもたくさんあります。だから、うちのジェラートは日替わりなんです」