あらかじめ原稿が用意されることが多いTVの仕事ですが、それをそのまま“読む”ことは簡単ではありませんし、また、“伝える”ともなるとさらなる技術が必要となります。
あなたはTV鑑賞中に、スタッフが出すカンペを読んでいるのがバレバレな出演者を見たことはありませんか? TVの収録ではよくカンペが使用されます。読み上げるべき文章や、次の展開などがカンペを通じて出演者に伝えられるのです。しかし、それをそのまま読んでしまうと、視聴者がそっちに気がいってしまうほど目立ってしまうのです。
いま、ニュースの世界ではこの目が横に動くことを防ぐために、原稿をカメラレンズに映し出す機械である「プロンプター」が使用されていると天野さんは解説します。このプロンプター、実は文字が縦向きに表示されるのです。人間の目は横に動くよりも、縦に動いた時の方が、その動きの幅が小さくなります。ですので、このプロンプターを使うことで、不自然な目の動きを最小限におさえることができるのです。
このプロンプターはすべてのTV出演者が使っているわけではありませんが、『NEWS ZERO』の曜日キャスターの櫻井さんはこれを採用。少しでもニュースの内容に集中してもらうためか、“伝える”だけでなく“伝わる”キャスターとして、見せ方にもこだわっているようです。
「彼が担当する特集コーナーはかなり長い上、縦長の画面とともに全身が映っています。それでも一貫して、正面つまりカメラを見据えています。正面を見ている人は堂々と見えて信頼がおけるのです」図解 テレビに学ぶ 中学生にもわかるように伝える技術典
確かに櫻井さんはカメラの前でも堂々と振る舞っています。キャスターにとって担当コーナーの尺の長さは、その負担に比例することでしょう。しかし、どんな状況でも堂々と振る舞うことができる「現場力」を櫻井さんは持ち合わせているのです。
また、先の視線と同じように、不自然な動きは視聴者の意識を別のところへ誘います。ですので、ニュース内容を伝えることに集中してもらうためには、堂々とカメラを見据えることが一番なのです。
嵐のメンバーということだけで注目されがちな櫻井さんですが、主役は自分じゃないと言わんばかりに、視聴者がニュースに集中できるよう様々な工夫をしています。視聴者にとってノイズとなることはすべて取り払い、ニュースを“伝える”だけでは満足せず、“伝わる”ことにこだわるのが櫻井さんなのです。
そういった姿勢が嵐ファン以外からも理解されており、今では人気のキャスターとして、男女問わず支持を得ています。多くのカテゴリーで活躍する櫻井さん。2016年度はどのような分野で活躍されるのでしょうか。今から注目が集まります。
<参考書籍>
『図解 テレビに学ぶ 中学生にもわかるように伝える技術』天野暢子著(ディスカヴァー・トゥエンティワン)