少女たちを魅了する村田兼一という存在
少女たちが「かわいい」という写真家・村田兼一は1957年、大阪の生まれ。
村田兼一を師として写真をはじめた村田タマは「村田タマによる『村田兼一評論』」のなかで、
「村田兼一の制作は彼自身が昔から語っているように、「死」と隣りあったところから始まった。彼は床に臥し、水すら喉を通らず、外へ出ることが何よりの恐怖で、古い邸に妖しく包み込まれた状態から制作を始めた」と語っている。
吉岡愛花が言う「村田さんは『死に対する恐怖がすごかった』」はこのことを指す。村田の人形愛、そしてエロスとタナトスというテーマは、村田の心の闇から生まれた。
そんな村田の作品に惹きつけられる理由はただひとつ。「わかるものにしかわからない世界というものは、わかるものにとってはとても心地よい世界」だからだ。
村田にとって「少女」とは? そして村田の作品になぜ、「少女」はこうまで惹きつけられるのか? 村田自身に訊ねた。
今までの村田ワールドにはない良さがあるモデルたち
●北見えりさん、吉岡愛花さん、月乃ルナさんの3人の撮影はいつくらいからはじまったのですか?
「北見えりさんは2014年の1月くらいから撮りはじめました。そして月野ルナさんが3月。吉岡愛花さんが4月の終わりくらい。その後、各々2~3回、撮影しています」
●ほぼ同じ時期ですね。この3人の起用は考えてのことなのですか?
「考えていなかったですね。僕の写真はあまりにもえげつないじゃないですか。だから、僕の方からモデルさんに『お願いします』とは声をかけづらいんですよ。モデルさんの方から『やります』といってくるのを待つ、という感じ。
それでも応募は年間30人くらいあります。でも、モデルさんの採用率は低くて、新人は2年に1人くらいなんです。2012年に七菜乃さんがモデルとして現れてから新しいモデルがいなかった。だけど、2014年はモデルさんの当たり年で、北見えりさん、吉岡愛花さん、月乃ルナさんと3人のモデルが来てくれた」
●3人の起用は偶然だったわけですね。
「吉岡愛花さんが4月の終わりくらいに来たことで、2014年はこの3人のモデルで回そうかなという気にはなりましたね」
●北見えりさん、吉岡愛花さん、月乃ルナさんの3人はとてもフレッシュで、新しい村田ワールドが見れた気がします。
「新しいモデルが3人いるので、そういう意味では新鮮ですよね」
●村田ワールドにある「少女性」が再発見的されたような気がします。村田ワールドにこの3人のモデルがはまっているように思いました。
「僕としては自分の世界にはめているというよりは、モデルの個性を活かしているつもりですけどね。モデルによるんですよ。モデルの持っているものを活かした方がいい場合と、落とし込んでいった方があう場合と。その調節はモデルを見ながらやっていますね」
●三人の特徴を教えてください。
「北見えりさんは、キャラ立ちしているというか、自分でもいろいろと活動している方ですね。彼女のその、メガネキャラを取り入れて、使わせてもらっているというというところです。
吉岡愛花さんは、童女というか童(わらしべ)みたいな感じもあるし、すごく冷たい冷酷な大人の顔にもなる。その変化がすごく面白い方でしたね。自分ではピュアなブラックだといっていますが(笑)。
月野ルナさんは、僕は前まではぜったい、金髪は撮らなかったんです。カラコンも撮らなかった。でも、それでもなんかいいやという気にさせられた。相殺してもいいよさがありましたね」
●3人とも個性的ですよね。北見さんはもう有名なモデルさんだし、吉岡さんには人形的な感じ、少女から脱したい的な感じがある。月乃さんは今までの村田ワールドにないものがありますね。この3人に共通しているのは、自分を表現したいというところなのでしょうね。