村田兼一という写真家がいる。
村田兼一の写真作品は、ある意味、観る者を選別すると言っていい。それは、村田が魅せる写真世界が人形愛、そしてエロスとタナトスがテーマだということが関係している。
村田は美少女を被写体とする。だが、写真に閉じ込められた美少女に命ある人間としての生の息吹は感じ取れない。魂のない人形が置かれている写真、としか見えない。その人形の衣服は脱がされ、無垢な裸体となっている。しかも秘められた部分まであらわにする。猥雑なエロスにタナトス(死への誘惑)が漂い、その独特な世界に観るものはいつしか虜になっていく。
人が「村田ワールド」と評する、この甘美な世界観に魅了されるのは男性だけではない。少女もまた、心酔して村田のモデルになることを夢見るのだ。
現在、日本国内で刊行されている村田兼一の写真集には、『眠り姫~AnotherTaleofPrincess』(2013年/アトリエサード)、『パンドラの鍵』(2014年/アトリエサード)、『さかしまのリリス』(2015年/アトリエサード)の3冊がある。
僕が村田兼一を知ったのは2013年ごろ。それ以前の村田の作品は実はよくわからない。僕が知っている村田のモデルは、村田タマ、口枷屋モイラ、七菜乃の3人だった。しかし、2015年に発表した『木枯らしの少女』では北見えり、吉岡愛花、月乃ルナという3人の美少女がモデルとなっている。
村田ワールドの少女たち
北見えり
村田ワールドの新たな住人となったモデルの女の子はどんな子たちなのだろう? 北見えりと吉岡愛花に話を聞いてみた。
●北見えりさんが思う、村田さんの作品の魅力は?
「『かわいい』ですね。女の子をよりかわいく撮ってくれるから好きです」
●モデルをやられての感想は?
「なんだろう。ザ・村田ワールドに入ったという感じですかね。村田さんは写真を20年くらいやっていらっしゃるんですけど、世界観はぜんぜん変わらないんです。私はその世界観の中ににすっと入っていったという感じでした。村田さんの描く少女像みたいなものに私が当てはめて、すっと入れました」
●前から村田さんの作品は見ていて?
「もちろん、見て知っていました。一度、村田さんにお会いしてご挨拶させていただいたときに、モデルをやる話になって、2015年の1月に撮影していただきました。村田さんの住む大阪には旅行がてらでいって。3回くらい撮影していただいています」
●ヌードの撮影に抵抗はなかったんですか?
「いや、ぜんぜんなかったですね。もともと自分でもモデルとしてきわどい写真は撮っているので。それに村田さんが紳士的というか、優しい人なので。ぜんぜん、なにもないです」
●作品も人間性もわかっているし。安心してということですね。
「そうですね、安心してぱっと(笑)」
●北見さんはモデル活動もされているんですよね。
「モデルとネットのコラムも書いています。あと、自分でも最近、写真を撮りはじめました。撮影会の主催とかグッズ制作とか、もろもろやっています」
●モデルだけでなく、自分でも表現していきたい?
「そうですね。これからいろいろやっていきたいなと思っています。モデルもやるし、自分でも写真を撮っていく。両方やりたいですね。自分を撮るためにカメラを買いました」
●セルフポートレートのために!
「そうです。カメラマンに撮ってもらっていない時間がもったいないないと思って。だったら自分で撮っちゃおうと思って。すぐに歳とっちゃうんで今のうちに撮っておこうかなと思って(笑)」