フリーキーな言語センスの楽しさを存分に味わってください!

こうした擬音の使い方でも顕著なように、森雪之丞さんの作詞曲の最大の魅力は、とにかく"楽しい"ことです。

作詞家としての高い能力によって生み出される美しい言葉やハッとするような鮮烈な言葉、それらに加えて、森さんが作ったアニソンの歌詞には楽しさが溢れており、それが楽曲に独自性を与えているのです。

森さんの楽しさに満ちた言葉の数々は、自由奔放な歌詞となってリスナーに届けられます。

そんなフリーダムな歌詞の一例を。森雪之丞アニソンの代表曲ともいえる『DRAGON BALL Z』主題歌『CHA-LA HEAD-CHA-LA』には、こんなインパクト大のフレーズが登場します。

「溶けた北極(こおり)の中に 恐竜がいたら 玉乗り仕込みたいね」(『DRAGON BALL Z』主題歌『CHA-LA HEAD-CHA-LA』より)と、サビ直前の一番盛り上がるパートで、唐突とも思えるタイミングで不意に顔を出すこのフレーズ。

一言でいえば、荒唐無稽な文章ですが、それでも尚、主人公である孫悟空の天真爛漫なキャラクターや『DRAGON BALL Z』の世界が浮かび上がってくるようなインパクト抜群で元気一杯の神がかった言葉のチョイスです。

言葉の意味は分からないけれども、それでもそのパワフルな歌詞の中に作品性が的確に表現されている。そして、何よりも聴いているだけで元気が湧いてくる。

フリーキーで、どこまでもフリーダムでありながら、細かい理屈は抜きして本能的にワクワクさせてくれるような言葉を紡がせたら、森さんは抜群のセンスを発揮されます。

それは、アニソンだけに限らず歌謡曲の世界においても同様です。中村めいこさんとの共作による『君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね』(後にアニメ『夏のあらし!』でもカヴァーされた名曲!)などは、そうした歌詞世界の魅力が詰まった代表曲といえるでしょう。

この曲は、「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね」「果実大恋愛(フルーツスキャンダル)」など、論理的な意味は分かりかねるものの、それでも恋の多幸感と高揚感は、聴く者のハートにシッカリと届いてくるという秀逸なフレーズのオンパレード!

こうしたオリジナリティーに満ちた言語感覚も、森雪之丞さんの作詞曲における大きな魅力といえるでしょう。

豊か過ぎる発想による大胆な構成がとにかく凄い!

リズミカルでフリーキーな言葉で構築されていく森雪之丞さんの歌詞世界。

そういった単語一つ一つのチョイス、フレーズのおもしろさのみにとどまらず、森さんの作り出す歌詞は、その構成自体がダイナミックでユニークなものが多いのも特徴です。

コロッケのレシピをそのまま歌にした『キテレツ大百科』主題歌の『お料理行進曲』に、全編に渡ってマージャン用語を交えた言葉遊び(というか駄洒落)が展開される『らんま1/2』の『じゃじゃ馬にさせないで』などなど、その独特な発想から生まれた名曲は数知れず。

現在『おそ松さん』としてリメイクされ大ブームになっている『おそ松くん』(1988年年に放送を開始したテレビアニメ第2作)でエンディング曲として使われていた『おそ松くん音頭』も森さんの豊かな発想による世界観が楽しい一曲。

六つ子のおそ松兄弟は顔も体型も全く同じなので、衣装を交換したり、顔のパーツを取り替えたりしても見た目が全く変わらない……という赤塚アニメにピタリのナンセンスな内容で、これまたその発想力の豊かさと奇抜ともいえる目の付け所が楽しい楽曲となっています。

そんな歌詞をベテラン演歌歌手の細川たかしさんが拳を効かせて歌うわけですから、その破壊力たるや……今、『おそ松さん』に夢中になっている女性アニメファンの方々も、ここは温故知新! 『おそ松くん音頭』で森雪之丞さんのユーモラスな歌詞世界に触れていただきたいと思います。