さて始まりました、「ネットの検索ワードから、社会のフンイキを見る」的な企画でございます。

初めまして、みなさま、何一つ専門的な知識を持つことなく劇作家となり、仕方なく自分の身の回りのことを書いております、岩井と申します。

俳優もやっていて、ゴッドタンのキス我慢選手権に出させてもらって赤外線に引っかかって知らんぷりしたのが、俳優としてのキャリアの絶頂だと思っています。暇だったら見てね。
では参ります。

ペルソナとは
製品やサービスを作る際に描く、架空の人物像のこと。年齢、職業、居住地だけではなく、趣味・嗜好、休日のすごし方、Web・ソーシャルでの行動などを細かく設定することで、効果的なマーケティング・販売戦略を決めることができます。

 

検索ワード「1人 ディズニー」

さっそく寂しい。初回を飾るにふさわしい寂しさだ。

イメージして欲しい。この「1人」と「ディズニー」を打ち込んでいる人の後ろ姿を。

そしてその表情を。彼、彼女は1日の仕事を終えて帰って来たのだ。東京に出て来て1年、凄まじい勢いで時間は過ぎていった。

ようやくひと息ついて、この1年を振り返る余裕が、新しく買ってまだ開けていないコーヒーメーカーを存在させていた。

ようやくその箱を開け、故郷にいる家族や友人達を思いながら、「わたし、東京で生活出来てるわ…」と、ひとりごち、かつてのハナクソ食べてる子供を見ながら通学していた田舎暮らしから考えたら、かなり上り詰めた感もあるにはあるんだけど、「はて、そして私は本当に東京を知るに至ったのだろうか」と考えるのだ。

そして東京出身の同僚との会話を思い出す。

彼はこんなことを言っていた「そういえばさあ、東京で生まれ育ってると、あえて東京タワーとかスカイツリーとか行ったことないよね、っていうか行かないわ」。

そんなことから、東京出身の人達はあえてそういった場所に行かないという知識を得るに至り、「なるほど、じゃあうかつに『タワー行きたい!』とか言っちゃダメなんだな」と思いつつも、だからって自分もタワーやツリーに行かなくてもいいのかというと、そうでもない。

先天的に「トーキョー」な人達は、無意識にでもツリーやタワーが視界に入る範囲を移動し続けてきたのだ。20年以上もそツリーが見える景色の中で生きてきたら、ほとんど「ツリーに行った」に等しいはずだ。

そこと並ぶためには、「直る(ちょくる)」しか、ない。ツリーでもタワーでもいい。直接行くしかない。しかし、誰も誘えない。

なぜならさっき書いたとおり、同僚達は「東京」とイメージされるものには、あえて足を運ばないのだ。

だったら、同じ故郷を出て東京に住む友人に……危険だ。彼ら彼女らは、すでにディズニーもツリーも済ませているのかもしれない。

「あ、まだ行ってないの? 行ったけど、わざわざ行くほどのところでもないよ?」と、これから行こうとする者の気持ちを踏みにじる物言いをされたら、もう立ち直れない。

やはり1人で行くか……いや、危険だ。

ツリーは確か墨田区、タワーは港区だ。そんなところを1人で徘徊しているところを同僚や知り合いに見られたらどうすればいいんだ。「住んでるのに今さら観光!?」などと思われるのも、非常に危ない。

やはりここは東京を離れて、実は千葉県にあるディズニーだ。こういう人のためにディズニーは千葉にあるのかもしれない。

きっとそうだ。ちょっと待て。ディズニーに1人で行ったとしても、誰かに見られたら?

一体どこまで離れればいいんだ。沖縄か? 

いや、それじゃあ元の目的が何も果たされない。考えろ……よし、大丈夫だ。

ディズニーはタワーやツリーよりも、敷地がだだっぴろい。

たとえ、たまたまデートする同僚や不倫する上司と知り合っても、「知り合いと来てて、わたし絶叫系ダメだからレストラン行くんです~」などと言って疑いをかわすことも可能だ。

行ける。

そして彼女は、次の休日にディズニーランドに1人で行くことを決めるのだ。そして、自分がそういった危機感を感じているということは、同じ地方出身者達も同じ恐怖を持っているのではないか、という確信のもと、ノートパソコンに向かう。

そしてそこには何が書かれているのだろう。1人でのディズニーランドの楽しみ方、1人だからこそ、誰にも邪魔されずに楽しめるという旨の情報、そこには彼女を縛り付けていた「言い訳としてのディズニー」から解放する、「新世界としてのディズニー」が待っているのだろう。

何を言ってるんだ。

「1人 ディズニー」
検索した人たちがたどりつく、ウレぴあ総研の記事

【TDR】初心者さんでも大丈夫! 絶対楽しい「ひとりディズニー」を満喫する3つのコツ 入門ガイド

いわい・ひでと●1974年、東京都生まれ。15歳から20歳までを家にひきこもって過ごす。'03年ハイバイを旗揚げ、以来脚本家、演出家、俳優として活躍。'12年NHKBSプレミアムドラマ『生むと生まれるそれからのこと』で向田邦子賞、'13年『ある女』で岸田國士戯曲賞受賞。https://hi-bye.net

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