外飼いの猫が“報復”を受けたら?
庭を汚されて怒った近所の住民が猫を傷つける、ガレージに忍び込んでいた猫を気づかず轢き殺してしまうなど、外飼いには生命の危険がつきまとう。こんな時、飼い主は相手方へ損害賠償を請求できるのだろうか?
飼い主の自業自得と考える人もいるだろうが、法律的には損害賠償を請求することができる可能性が高い。ただし条件付きだ。
「ペットの賠償額は“時価”が原則です。最近は、長年家族のように溺愛していた猫なら時価以上の治療費、慰謝料を請求できる流れになってきていますが、原則に従えば拾ってきて飼っている猫は時価0円と算定されます」(篠田弁護士)
しかも外飼いであれば、飼い主の管理責任が問われることになる。たとえば轢かれて死んだ場合でも過失相殺によって賠償額が減らされる可能性もあるという。
次に、外出させていた猫が他人に飼われるようになった場合。猫に直接の被害はなくても飼い主としてはショックだろう。こんな時、相手から取り戻すことはできるのか。
「飼い猫と知っていて盗まれた場合、もちろん取り戻せます。不法行為に基づく損害賠償請求もあり得ます。捨て猫と勘違いして拾われた場合も、猫は通常“ペット”と見なされる動物ですから取り戻せます」(同)
民法195条では「ペットと扱われないような野生の動物」については、1ヶ月を過ぎると取り戻せなくなるとされている。しかし猫はこの期間を過ぎても取り戻せるということだ。
もし拾われた後、第三者に贈与・売買された複雑なケースでは猫を取り戻せるだろうか。
「2年以内なら返還を要求できます。ただし金銭で譲渡されていた場合、第三者に対してその代金を支払わなければならない可能性があります」(同)
このように、外飼いしている猫でも被害があれば、飼い主は損害賠償や返還を請求できる余地があるということになる。とはいえ、猫に危害を加えた相手をいつも特定できるとは限らないし、訴訟リスクや刑事罰を無視して“報復”に出る人間もいるだろう。
今はまさに空前の猫ブームと言われ、猫の飼育数は犬を追い抜く勢いだ。完全室内飼いが主流になってきているとはいえ、まだまだ外飼い派の人も少なくない。この記事では法的リスクだけを取り上げたが、猫同士の喧嘩によるケガ、病気感染、失踪など、飼い猫を外へ出すことはあらゆるリスクがつきまとう。
運動不足解消になりそうだから、室内でのツメ研ぎが減るから、といった安直な理由で外飼いを選択するのではなく、「生き物の命を預かる」「地域住民に迷惑をかけない」という観点から、大切な猫の飼い方についてじっくり考えてみていただきたい。
■取材協力 篠田恵里香弁護士
東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。
債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。
また、離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。
外資系ホテル勤務を経て、新司法試験に合格した経験から、独自に考案した勉強法をまとめた『ふつうのOLだった私が2年で弁護士になれた夢がかなう勉強法』(あさ出版)が発売中。
『ゴゴスマ -GO GO!Smile!-』(CBC/TBS)や『ロンドンブーツ1号2号田村淳のNewsCLUB』(文化放送)ほか、多数のメディア番組に出演中。
ブログ「弁護士篠田恵里香の弁護道」https://ameblo.jp/erika-shinoda/