今月12日に肺炎による多臓器不全のため死去した演出家・蜷川幸雄さん(享年80)の告別式が16日、東京都内の青山葬儀所でしめやかに営まれた。生前の蜷川さんとゆかりがあった、平幹二朗、大竹しのぶ、吉田鋼太郎、小栗旬、藤原竜也が弔辞を読んだ。
平は、自身が42歳の時に、芝居を通して40歳の蜷川さんと出会った。それからの40年間で17本の作品を二人で作り上げてきた。「でもあなたは一度も僕の演技を褒めてはくれませんでしたね。シャイなのは分かっていましたが、なんとかあなたから褒め言葉を引き出したくて、熱演に熱演を続けました。肺を痛めてしまうまでは…」と振り返った。
「こうしている今も、蜷川さんに出会えた喜び、感謝の言葉しか浮かんできません」と思いを語った大竹は「私たちは、『どうだ?』と蜷川さんがふらっと稽古場に現れてもいいように、一生懸命演劇を続けていくしかないのです。稽古場でお待ちしています。いつも、いつの日も。親愛なるニーナへ」と語り掛けた。
「蜷川さんがひつぎに入ってから顔を見ていない」と明かした吉田は「ベッドの上で闘う蜷川さんの顔を目に焼き付けておこうと思ったからです。そちらに逝く前、きっとみんながずらっと並んで蜷川さんからのキューをワクワクドキドキしながら待っていて、蜷川さんがいつものように甲高いよく通る声で『いいかい、いくよ。よーいどん!』と言っている姿が、風景が、蜷川さんの目には映っていたのではないでしょうか」と呼び掛けた。
小栗は「蜷川さん、どうします? 予定していた僕との公演。嫌われて、僕も勝手に嫌って、仲直りしてもらって、やっと一緒にできると思っていたのに。約束したのに。あんなにしっかり握手したのに。悔しいです」と無念さをにじませ、「僕の生意気をいつも受け止めてくれてありがとうございました。とことん踊らせてくれてありがとうございました。道を照らし続けてくれて本当にありがとうございました」と感謝を述べた。
最後に弔辞を読んだ藤原は話し出す前からあふれる涙が止まらず、「その涙はうそっぱちだろって怒られそうですけど」と蜷川さんに向って語り掛けた。最後に蜷川さんと会ったのは、11日に病室を見舞った際だったという。蜷川さんから掛けられた言葉を振り返り、「悔しいでしょ、悔しくて泣けてくるでしょ。僕も同じです。もっと一緒にいたかった。仕事をしたかった」と涙で声を詰まらせた。
藤原は「1997年、あなたは僕を生みました。くしくも昨日、僕の誕生日でしたよ。19年間、苦しくも、ほぼ憎しみしかないですけど、最高の演劇人生をありがとうございました。それじゃあ、また」と別れを告げた。
この日の告別式には、妻で喪主の宏子さん、娘で写真家の蜷川実花さんをはじめ、鈴木杏、蒼井優、松本潤、二宮和也、香川照之、高畑充希、中尾彬、浅丘ルリ子、山本裕典、宮本亜門、渡辺謙、尾上松也、市村正親、篠原涼子、生田斗真、藤木直人、森進一、佐藤隆太、市川猿之助、上川隆也、多部未華子、石橋蓮司、北村一輝、井浦新、斎藤工、夏木マリといった著名人ら900人、一般のファン444人の1344人が参列した。