コレクターに聞く「アートの楽しみ方」

およそ1時間ほど会場を回った後は、再び別室でお茶とお菓子をいただきながら、宮津さんのレクチャータイムです。

宮津さんは、1994年からコレクションを始め、これまでに400点ほどの美術品を収集してきました。現在もサラリーマンとして企業に勤めているそうですが、アート以外にはほとんどお金を使わず、またコレクションした作品を1点も売ったことがないそうです。

なぜ、美術品をコレクションするのでしょうか。宮津さん曰く「美術品と一緒に暮らすといろいろなことが見えてくる」とのこと。

「好きな人ができたら、最初は遠くから見ている。そのうち、できたらデートしたい、一緒に住みたい、結婚したいと思うようになります。実際に結婚をしてみると、今まで知らなかった一面が見られるようになります。アートも同じです。美術品を買われて家に持って帰って一緒に暮らすと、いろいろなことが見えてきます」

また美術作品のコレクションは、誰でも楽しむことが出来るとおっしゃっていました。

「コレクターは特別な人たちではありません。私は普通のサラリーマンで特別お金があるわけでもありません。しかし、お金はなくても大丈夫。自分がおもしろいと思うもの、自分の予算で、まだほかの人が(おもしろいと)気付いていないものを買えばいいんです。

これは、今までとは違う視点を持つということになります。何をおもしろいと思うかは、みなさんの自由。気軽に楽しんでください。

ちなみに僕の場合は、“目(網膜)”ではなく“頭”で見るのが現代アートだと考えていて、現代アートを通して世の中を別の視点で見ることができるのが、おもしろいと感じています」

宮津さんは、香港や台湾、中国などのアートフェアに頻繁に出かけるそうですが、そのほとんどが週末。アジアなら、金曜に午後だけ休みを取って、午後や夕方のフライトで現地に入り、月曜日の朝に羽田からそのまま会社に行くそうです。サラリーマンコレクターらしいエピソードですね。

今アートが熱い地域はアジア!

ここからは参加者からの質疑応答となります。質疑応答の内容は以下の通りです。

Q ギャラリーに入るという行為の敷居が高い。どうやって入っていけばいいのでしょうか。

A ギャラリーと美術館の大きな違いは、入場料の有無。美術館は入場料を払っているので堂々と入れますが、ギャラリーは無料なのでなんとなく入りづらい。でも、ギャラリーに展示されているものは売り物なので、デパートと同じだと思えば大丈夫。わからないことはギャラリーの人に聞けば教えてくれます。そのとき、カタログやTシャツが売っていれば、それを買うだけでも喜ばれますよ。

Q コレクションを家に飾るときの注意などがあれば教えてください。

A 温度や湿度が急激に変わることは、美術品にとってすごくストレスになります。ですから、エアコンやお風呂場、台所の近くなど、短時間で室温や湿度が急激に変化するところは気を付けてください。あとは、直射日光も避けましょう。紫や黄色などは紫外線に弱く、色が飛んでしまうこともあります。

Q コレクションをするときには、自分なりにテーマやコンセプトを持ったほうがいいのでしょうか。

A プロフェッショナルなコレクターを目指さないのであれば、好きなものを自由に購入したほうがいいと思います。一方、この作家、この時代というようにフォーカスしてコレクションを極めていくと、世界で有名なコレクターとなって、それに関する情報が集まりやすくなる可能性はあります。私は、特にテーマは設けていません。同時代の優れたものを買うのがコンセプトです。

Q 今、世界でアートシーンが熱い都市はどこですか?

A アジアならば香港ですね。「アート・バーゼル香港」は、アジア最大、最高峰のフェアです。あとは上海、ジョグジャカルタ、シンガポールもおもしろいですね。個人的にオススメなのは台北です。興味深いアートがあるのはもちろんですが、人が優しくて、ご飯がおいしくて、タクシーが安くてすぐつかまる(笑)。まずは11月に行われるアート台北をのんびりと見て、来年アート・バーゼル香港に行くというのもいいかもしれませんね。


かなり盛り上がってきましたが、ここでお時間となりました。参加者へのおみやげは、宮津さんの著書やアートフェア東京のカタログなど。アートフェア東京の当日の入場券も同封されているので、イベント後にゆっくりと会場を見て回ることができました。

参加者の方に感想を伺ったところ

「アートが身近に感じられるようになりました。敷居が高いと思っていましたが、わかりやすく魅力的な解説で、楽しみ方が少しわかったような気がします」

「より深く、現代アートに関わろう、買ってみようという気持ちが強まりました」

「作品の裏にある歴史や関係性を調べていくと、さらにその作品が好きになるという考えをもつことができました」

「現代アートにはたくさんの仕切りがあって、難しいものだと思っていましたが、このイベントに参加して興味の糸口を見つけられました。とても楽しいイベントで、参加してよかった!」

といったコメントが寄せられました。

確かに、アートというと「難しい」といったイメージがありました。しかし、宮津さんのお話を伺い、実際にナビゲートしていただいてアートフェア東京を巡ってみると、普段とは違った視点で作品を見ることができたせいか、アートが身近に感じられました。

ギャラリーの方々も丁寧で優しく、わかりやすく解説してくれるため、作品や作家の方にさらに興味が湧いてきます。

アートに興味がある人も、これまであまりアートに興味がなかったという人も、一度アートフェアに訪れてみると、新しい発見があるかもしれません。

そして、さらに興味を持ったら、何か買ってみましょう。コレクターというと大げさに聞こえますが、お気に入りのものを家に飾ると考えれば、とても自然なことです。

チケットぴあでは、これからもプレミアム会員向けに「ART MEETS YOU!」のイベントを随時開催していきます。興味を持たれた方は、ぜひ次回のイベントに参加してみてください。新しい世界への扉が開かれるかもしれません!

Mac、iPhone、iPad、Android、デジカメ、楽器、革小物、コンビニ、水族館、100円ショップ、プロ野球、女子バレーボール、女子ボーリングなどなど、多方面に興味を持つ雑食系ライター。千葉県在住。北千住や上野、池袋、新橋などの飲み屋に出没。たまにiPad1台でDJやってたりもします。