撮影:熊谷仁男

8つの“片想い”のエピソードを、14人の主演キャストで描いた『全員、片想い』。

本作は、FMヨコハマ「BANG BANG BANG!」でパーソナリティーを務める俳優・加藤雅也が発案し、スマホ小説投稿サイト「E★エブリスタ」で募集した片想いのピソードに基づく電子小説4本と、映画のオリジナルの物語4本を映画化した感涙のラブストーリーです。

©2016「全員、片想い」製作委員会

その中の1編『サムシングブルー』(監督・脚本:宅間孝行『同窓会』『くちづけ』)は、内気で不器用な女子高生の希美が、勇気を出して足を踏み入れた美容室で、自分を見違えるぐらい綺麗にしてくれた美容師の慎一に恋をしていく姿を、夏の終りの湘南を舞台に映し出していくもの。

全編セリフを排し、音楽と状況音だけで綴る語り口も鮮烈な本作で、ある“秘密”を抱えた女子高生の希美を演じたのは、ドラマ「妄想彼女」「釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助」や映画『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』など話題作の出演が相次ぐ広瀬アリスさん。

慎一役の斎藤工さんとは初共演です。そんな彼女が、映画の撮影のエピソードから自身の“片想い”&衝撃の“フラれ”体験、フラれた後のとっておきの解消法=立ち直り法までド~ンと語ってくれました。

距離が近くなるとやっぱりドキドキしますよね。

――ピュアで切ないお話ですが、台本を最初に読んだときはどう思いました?

「実は、最初に読んだときはよく分からなかったんです。

いつもは台本を読んだときに、誰と誰が会話をしているのか想像がつくんですけど、今回の台本はト書きだけのちょっと変わったものだったので、画やストーリーがすぐに浮かばなかったというのが第一印象でした」

――でも、音楽や状況音だけで見せていくスタイルは新鮮だったんじゃないですか?

「そうですね。希美という女の子のキャラクターがある程度出来上がったときに、あっ、こういうのもいいな、こうした方がいいなっていうアイデアがどんどん自分の中に浮かんできて。

監督の宅間さんも私が提案したことを受け入れてくださる方だったので、いっぱいわがままを言わせていただきました(笑)」

――例えば、どんなことを提案されたんですか?

「希美ちゃんは普段は大人しい人だけど、家にひとりでいて、好きな人を思っているときは本当に我を忘れるぐらいワ~と感情を爆発させて明るくなるんですよね。

セリフがないので、そういったところで彼女らしさを表現したかったし、そのために、部屋に置いてある猿の人形をお芝居で使いたいと伝えました」

――それにしても、美容院に行くまでの希美ちゃんはめちゃくちゃダサかったですね。

「ダサかったですね~(笑)。こんなモサい子、いるんだ~と思ったけれど、あのときの彼女はウィッグをつけたり、スカートの丈を長くして、あとは細かいことですけど、爪の長さなども意識しながら演じました」

©2016「全員、片想い」製作委員会

――そんな希美ちゃんが、斎藤工さん演じる慎一に髪を切ってもらうところから……。

「表情がどんどん明るくなっていきますよね。

でも、最初にメガネを外されるから、何が起きているのか本当に分からなくて、ある意味硬直しているんです(笑)。どうなるんだろう? 誰が髪を切ってくれているんだろう? とか、そういった感じでしたけど、距離が近くなるとやっぱりドキドキしますよね。

切り終わって、間近で顔を見られるところなんて、リアルに“おお!”ってなりましたから(笑)」

――あの表情の変化で彼女の気持ちがすべて分かりますが、どんなことを心がけられましたか?

「ヘンに作り込まず、ありのままでいいと思っていました。

彼女ってすごく純粋で、真っ直ぐだから、思ったことがすぐ顔に出てしまう。

ショックを受けたときも同様ですよね。そんなところを気をつけながらお芝居をしていました」

©2016「全員、片想い」製作委員会

――慎一に心をときめかせ始めた直後に、最初の“ショック”が希美を襲いますね。

「そこで、希美のある“秘密”が明らかになって、彼女がどうして引きこもっていたのか? が分かるわけですけど、あそこは心情と音楽がすごくマッチしていていいですよね。

そこからの急展開も絶妙だなと思いました」

――急展開も急展開です。江ノ島にみんなで遊びに行ったときに慎一の彼女が現れて、彼から「結婚するんだ」って告げられるんですから。

「もう、大失恋ですよね。“こんな失恋の仕方は絶対イヤだ~! やりたくない!”って監督にも言ったぐらいショックでした(笑)。

でも、この『サムシングブルー』は、片想いの話ではあるんですけど、決してバッドエンドではないんですよね。

みんなが観終わった後に、ちょっと心が温まるというか、ホッとできる仕上がりになっていて、大切な人のことを想える作品になっていると思います」

――斎藤工さんとの初めての共演はいかがでしたか?

「江ノ島をお散歩するシーンは素で楽しんでいるようなところもあったんですけど、あまりお話ができなくて。

でも、何とも言えないその微妙な距離感が、本音をなかなか言えない今回の役の距離感に繋がっていていいんじゃないかのかなと思いました」

――希美ちゃんは、慎一のどんなところに惹かれたと思います?

「大人の魅力ですかね。その気持ちは分かります。

大人の方って落ち着きがあるし、やっぱり素敵だなって思います。

あ~素敵って拝みたくなることもあるし、希美ちゃんには共感できるところがたくさんありました(笑)」

――すべてを知った後に、希美ちゃんはとんでもないことをしてしまいますが、あのときの心情も理解できました?

「悪いことをするつもりはなかったけれど、あのときの彼女はいいな~という気持ちと嫉妬みたいな感情が大きくなっていたと思うんですね。

それぐらい、すべてがピュアなんです、希美ちゃんって。

でも、あそこは彼女が“自分は本当に失恋したんだ”って改めて痛感して、自分の中で踏ん切りをつけるところ。大人になる始まりのシーンなのかな?って思いましたね」