「ボカロPには高いセルフプロデュース能力を持ち、メジャーで十分に通用する作品を生み出すクリエイターが数多く存在します。しかも、楽曲制作だけでなく、その作品を支持するイラストレーターや映像クリエイターとチームを組み、ハイクオリティな映像作品まで作っている。幅広いカルチャーの担い手となるべき新世代のプロデューサーとして、大きな可能性を感じ、サポートしたいと考えました」

所属アーティストのDECO*27は、ニコニコ動画を中心に活動を続け、'10年に発表したアルバム『愛迷エレジー』はオリコンチャートを賑わせた。また、sasakure.UKも最新アルバム『幻実アイソーポス』がオリコンアルバムランキングの上位を獲得。

「人気のボカロPは、音楽的な才能があるのはもちろんのこと、ネットユーザーとのコミュニケーションを通じ、マーケティング的な部分を潜在的に学んでいます。音楽ビジネスの新たな主役になりうる存在ですね」

同社は、ボカロPたちのメジャーシーンでの活動基盤を築きつつ、一方で320万を越える楽曲を保有する、米アグリゲーター・オーチャード社の配信網を活用し、全世界へ向けて彼らの作品を配信していくと言う。

ボカロ楽曲は動画投稿サイトを通じて、いまや世界的な人気を獲得している。ネット上のコミュニティからメジャーシーン、そして世界へ。ボカロPたちの作品が、新たなクールジャパンのイメージとともに、世界を席巻する日は近いかもしれない。

はしかわ・よしひろ 1981年、神奈川県生まれ。編集プロダクションblueprint所属のライター、編集者。ビジネス・ネットサービス・グルメ・映画・音楽・コミック・ゲーム・スポーツなど、幅広い分野で取材・執筆を担当。構成を担当した書籍に『まな板の上の鯉、正論を吐く』(堀江貴文/洋泉社)、『伝説になった男~三沢光晴という人~』(徳光正行/幻冬舎)など。