2007年に楽曲作成ツール(ボーカロイド/VOCALOID)のひとつとして発売され、ニコニコ動画を中心に“ネットアイドル”人気を高めていった「初音ミク」。
インターネット上にアップロードされた関連動画やイラストは数知れず、大手企業とのタイアップ多数、デジタルハリウッドでは「初音ミク映像専攻」コースも開講。また、つい先ごろはネットの潮流と距離を置いていたフジテレビでさえもボーカロイド特番を放送して色々な意味で話題になった。
こうして世間にもボーカロイドが認知されるようになってきたとはいえ、初音ミク以外のキャラクターはなかなか知られていないのではないだろうか。今回は初音ミクを筆頭に、多彩なボーカロイド&その派生キャラまで、どれだけいるのか調べてみた。
不動のエース 初音ミク
クリプトン・フューチャー・メディアから発売され、ボカロブームの火付け役となった有名キャラクター。サンプリング元の音声は声優の藤田咲さんが吹き込んでいる。イラストの肩部分に「01」が見えるため最初のボカロキャラと誤解されそうだが、これはクリプトン社がリリースした「キャラクター・ボーカル・シリーズ」の第1弾というだけに過ぎない。実際はMEIKO、KAITO(後述)といったボーカロイドが先行リリースされており、同社としては3番目のボカロキャラになる。
ここまで世界的人気を得るようになったのは、動画サイト「ニコニコ動画」にユーザーから多数投稿された作品群がきっかけ。美少女でありながらどこか中性的な容姿、透明感のある歌声、公式に二次創作が認められていることもあり、さまざまなジャンルの動画が生まれ続けている。
正式に公表されているプロフィールが非常に少ないのもシリーズ共通の特徴で、イラスト以外には16歳、158cm、42kgという最低限の身体データのみ。これが逆にユーザーの想像力を刺激するプラスの方向へ働いているようだ。
そうした背景もあって、作成される動画もガチの歌唱曲からネタに走ったものまで、キャラクターとしての“芸風の広さ”はボカロ界で文句なしのナンバーワン。そのあたりは以前にMMDの記事(『【ボカロ】初音ミクが3Dに!MMDで広がるボーカロイドの世界』https://ure.pia.co.jp/articles/-/4965)として紹介しているので、ぜひミクさんの華麗なマルチタレントぶりを確認してみてほしい。
芸風だけではなく、キャラの外見も多くのバリエーションが作られている。ただでさえ貧にゅ…げふん、スレンダーなミクさんをさらに幼児体型にした「ちびミク」、手に持ったネギがトレードマークの「はちゅねミク」、胴体なんて飾りですと言わんばかりの謎クリーチャー「シテヤンヨ」、アメコミヒーローばりの筋肉美を誇る「北米風ミク」まで実にカオス。ミクさんは仕事を選ばないのだ。
仕事を選ぶといえば、ボイス担当の藤田咲さんにも興味深いエピソードが伝わっている。収録当時の藤田さんは初音ミクのギャラ体系を「CD売り上げに応じたロイヤリティ」と「給料5万円」から選ぶ権利があり、ここまでブームになるとは予想できず、結局は後者の5万円を選択したのだという。情報ソースが非公式なだけに真偽不明だが、もし本当だとすれば不憫な話だ。『およげ!たいやきくん』の子門真人氏、『機動戦士ガンダム』の富野由悠季氏に並ぶ“権利関係で儲け損なった人々”のメンバーになれるかもしれない。